妊娠
妊娠中に出血を伴う症状、絨毛膜下血腫と胎盤早期剥離とは
2020年11月25日
絨毛膜下血腫とは
絨毛膜下血腫とは、絨毛膜(赤ちゃんを包む膜のうちのひとつ)よりも子宮壁側(お母さん側)に血液が固まってできたかたまりです。絨毛膜下血腫は顕著な症状を引き起こすとは限らないため、血腫が小さい場合は特に見つけにくいこともあります。
妊娠初期の出血で、もしくは顕著な兆候や症状がなくても、日常的な検査の際に超音波検査でわかることが多いです。大半は安静にしていれば自然に吸収されるため、妊娠・出産には問題ありません。ただし、血腫があまりにも大きい場合は、胎盤が子宮壁から分離して発育不全の原因となったり、流産や早期陣痛のリスクが高くなる可能性があります。もし妊娠中に腟出血があれば、すぐに医師に相談してください。また、血腫が消えるまで性行為は控えましょう。
胎盤早期剥離とは
胎盤早期剥離とは、胎盤が通常よりも早く子宮壁からはがれてしまう現象で、妊娠後期に起こることが多いものです。
胎盤は、おなかの中で成長する赤ちゃんに栄養を届ける働きをしているため、通常、赤ちゃんがお腹から出てきてから取り出します。このため、早期に胎盤が剥離してしまうと赤ちゃんに酸素と栄養を届けられず、子宮内胎児死亡につながる恐れがあります。また、胎盤が剥がれたところから出血するため、母体に命の危険が及ぶ恐れもあります。
妊娠中に出血がみられると不安になると思いますが、多くの場合は心配いりません。しかし、腹痛を伴う腟出血の場合、胎盤早期剥離の前兆である可能性があります。
ただし、胎盤早期剥離は発症率が0.5~1.3%以下と、比較的まれな症状です。早期に診断・治療すれば、母体と赤ちゃんの両方のリスクを減らすことができます。
胎盤早期剥離のリスクがある人
胎盤早期剥離は誰にでも起こりうるものですが、特に以下の項目に当てはまる女性に起こりやすいと言われています。
- 多胎妊娠
- 以前にも胎盤早期剥離を経験している
- 喫煙している
- 妊娠中にアルコールをたくさん飲んでいる
- 妊娠性糖尿病、子癇前症、妊娠高血圧症候群、持病に高血圧がある
- 血液凝固障害(血栓性素因)がある
- へその緒が短い
- 腹部外傷の経験がある(腹部をひどく強打したりおなかを下にして落ちた、あるいは交通事故に遭った)
- 35歳以上である
- 子宮筋腫がある
- 37週以前に早期破水した
胎盤早期剥離の症状
どのくらい剥がれたかにもよりますが、胎盤早期剥離の症状として、通常は以下のような症状がみられます。
- 腟出血(少量から多量までさまざまで、塊が出るものと出ないものがある)
- 子宮の圧痛
- 腰痛
- 腹部がけいれんするような痛み
- 頻繁に子宮が収縮する
特に気をつけたい症状は、下腹部ではなく上腹部に痛みが突然出現した場合です。また、上腹部以外であっても、胎盤のあたりに痛みを感じた場合も注意が必要です。
胎盤早期剥離の治療法
胎盤が早期剥離した場合、必ず何らかの治療が必要です。最初は軽症でも重症化する可能性はあるので、強い腹痛を伴う出血があった場合はかならず医師に診てもらってください。重症化すると、母体だけでなく、胎児にも生命に危険が及ぶ可能性があります。
胎盤早期剥離の治療法は、剥離の深刻度によって変わります。 わずかな剥離の場合 わずかでも剥離が起きれば基本的には入院です。また、胎児の状態や分娩状況にもよりますが、基本的には重症化しないうちに出産することが望まれます。もしくは、生命の危険を感じた赤ちゃんがシグナルを出すことで早期に分娩が始まることもあります。 わずかな剥離であった場合、産後は母体や胎児に大きな異常なく過ごせることがほとんどです。もし早産となりそうな場合は、胎児の成熟を促すために副腎皮質ステロイドを投与することもあります。 深刻な剥離の場合 剥離の状態が深刻な場合、もしくは症状が進行している場合、唯一の治療方法は出産です。深刻な状態のまま経過観察していると、お腹の赤ちゃんに十分な栄養と酸素がいかなくなって命を落としてしまうほか、母体の命にも影響が及ぶ可能性があります。この場合、通常は輸血が必要になります。
おわりに:妊娠中の出血には注意が必要です
- ほとんどの場合、出血が起こっても安静にしていれば母体にも赤ちゃんにも影響はない
- ただ、早期胎盤剥離の場合、最初は軽症でも進行して重症化することもある
- 早期胎盤剥離が重症化すると、母子ともに危険な状態に陥るリスクが高くなる
出血がみられたら、大事をとってかかりつけの産婦人科で診てもらうことをおすすめします。