妊娠
花粉症の薬、妊娠初期でも服用できる?
2022年2月23日
花粉症の薬、妊娠初期でも飲んでいい?
花粉症の薬は、医療機関で処方されるものばかりではなく、薬局やドラッグストアで市販されているものもあります。市販されている薬は一般的にそれほど副作用が強くないものが多いのですが、通常、成人には大きな影響がないものでも、妊娠中は飲まない方がいい成分が含まれていることもあるので、市販薬であっても自己判断で服用するのは避けましょう。
花粉症の症状はアレルギー反応によるものですから、つらい症状を抑えるためには、アレルギー反応を抑える「抗ヒスタミン薬」が必要です。妊婦健診などでかかっている主治医に相談するか、耳鼻科やアレルギー科などを受診し、医師に妊娠中だけれど花粉症の症状を抑えたい旨を相談しましょう。
花粉症で目がかゆい、鼻が詰まるなどの症状が出る場合、目薬や点鼻薬を使う人も多いと思います。これらは飲み薬と比べると、比較的妊娠や胎児に関するリスクは低いと言われていますが、やはり飲み薬と同じように妊娠中には摂取しない方が良い成分が含まれていることもあります。ですから、目薬や点鼻薬についても市販薬を自己判断で使うのは避け、どうしても使いたい薬がある場合は医師に相談して許可が出てから使いましょう。
妊娠に気付かずに飲んじゃった!どうすればいい?
妊娠中に飲んだ薬の胎児への影響や想定されるリスクは、週数によって変わるとされています。大きく分けると妊娠0~3週の「超初期」、4~7週の「器官形成期」、8~15週の「妊娠初期の終了」、16週以降の4つの時期で変わります。
- 妊娠0~3週(超初期とも呼ばれる)
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- この時期に服用した薬の影響は、ほぼないと考えられる
- ”All or None”の法則とも呼ばれ、もし受精卵が大きく影響を受けたら着床しないか、流産してしまう
- 妊娠を継続しているなら、薬の影響があっても完全に修復されて正常に育つとされる
- 妊娠4~7週(器官形成期とも呼ばれる)
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- 赤ちゃんの脳や脊髄などの中枢神経、心臓、消化器、四肢など重要な器官が作られる時期
- 最も薬の影響を受けやすく、もし影響を受けたら細胞分裂が正常に行われなくなることも
- 赤ちゃんに奇形が起こることもありえる(催奇形性)
- ただし、胎児に影響を及ぼす薬はごくわずかなので、市販薬を取り扱い説明書どおりに服用している限りはそれほど神経質にならなくても良い
- 妊娠8~15週(妊娠初期の終わりごろ)
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- 重要な器官形成は終わっていることから、奇形を起こしやすい時期は過ぎている
- 4〜7週よりは薬の影響が低いと考えられるが、奇形のリスクはやや残る
- 妊娠16週以降(妊娠中期以降)
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- 薬の影響が胎児に奇形や障害を引き起こすリスクはほぼなくなる
- 薬は胎盤を通じて胎児に影響するため、「胎児毒性」に注意が必要
- 胎児の成長が遅れたり、機能的な発達に著しく影響を及ぼしたりする状態
- 分娩日に近いほど危険度が高いとされ、まれではあるが最悪の場合は子宮内胎児死亡となる可能性がある
このように、妊娠0~3週(1カ月目)で薬を飲んでいた場合には、まず心配はいりません。薬の影響が大きかった場合は着床しないか、気づかない間に流産してしまうのです。逆に、薬の影響を受けても軽いものならば、完全に修復されてその後は薬の影響が現れることなく育つとされています。
妊娠4~7週(2カ月目)の場合、最も薬の影響が奇形という形で出やすい時期ですから、少し注意が必要です。とはいえ、この時期は本人が妊娠に気づいていないことも多く、うっかり気づかずに今までと同じように薬を飲んでしまう人は少なくありません。ですから、他の時期に比べれば薬の影響が出やすいとはいえ、市販薬を用法・用量通りに服用している場合に奇形が現れる確率は低いと言えます。
妊娠8~15週は重要な器官の形成が終わったことから、薬の影響で奇形を引き起こしたりするリスクがぐっと少なくなります。とはいえ、まだ身体を作っている真っ最中ですから、奇形を起こす心配がゼロではないことに注意が必要です。この頃には妊娠がわかっていることが多いので、薬を飲みたい場合は必ず医師に相談してからにしましょう。
妊娠16週以降は、薬の影響で奇形や障害が起こることはまずありません。しかし、薬によって胎児の成長が遅れたり、身体機能の発育に影響したりする「胎児毒性」というリスクが残りますので、やはりこの時期も薬を飲みたい場合は必ず医師に相談しましょう。
また、この週数は厳密にわかるものではなく、あくまでも目安で、多少前後することがあります。ですから、何週であったとしても薬を飲んでしまった場合はまず主治医に伝え、どのように過ごせば良いのか相談しましょう。
もし、妊娠中でも薬を服用した方がいいと医師が判断した場合、これまでにも妊婦さんに使った実績のある安全な薬を処方してもらえます。妊娠がわかった後は、薬を自己判断で安易に服用することなく、必ず主治医に相談しましょう。
妊娠中の花粉症対策でできることは?
妊娠中で薬を服用できない、しにくい場合、花粉症対策として最も大切なことは、花粉に触れない、体内に入れないということです。花粉は目に見えないくらいのごく小さな粒子ですから、何も対策をしていないと、目や鼻の粘膜や口(喉)からどんどん体内に入ってきます。そこで、以下のような対策をするのがおすすめです。
- 昼間の外出はできるだけ避ける
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- 昼間は樹木が日光にあたるため、花粉が飛散しやすいと言われている
- 不要不急の外出なら、できるだけ昼間を避ける
- 花粉症用のマスクや眼鏡でガードする
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- どうしても昼間に外出しなくてはならないときは、花粉症用のマスクやゴーグルをする
- 一般的なマスクやメガネは上下に隙間が広いため、花粉が入り込みやすい
- 花粉症用のマスクをすると、花粉の量を1/3程度まで減らせると言われている
- 花粉がつきにくい素材の服を着る
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- 毛足の長いコートやマフラーは、花粉がつきやすいので避ける
- 凸凹の少ないナイロン生地など、花粉がつきにくい生地をアウターにする
- 洗濯物や布団を外に干さない
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- とくに、花粉がつきやすい昼間は外に干さず、なるべく部屋干しにする
- どうしても外に干したいときは、夕方〜夜に干す
- 室内に花粉を持ち込まない
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- 玄関に入る前にアウターを脱ぎ、花粉を払う
- ブラシやスプレーなど、花粉を落とせるグッズを使うと良い
- こまめに掃除をする
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- 衣服や外に干した洗濯物の花粉は、完全に落としきれるものではない
- こまめに掃除機をかけるなどして、できるだけ室内の花粉を取り去る
- 部屋の換気は早朝か深夜に
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- 窓を開けて換気する場合、花粉の少ない早朝か深夜に行う
このように、まずはそもそも家の中に花粉を持ち込まない、昼間外に出るのをできるだけ避ける、洗濯物や布団を外に出さないなどの工夫で花粉症の症状を軽減することができます。さらにこまめな掃除や、余裕があれば室内に空気清浄機などを設置しても良いでしょう。
また、妊婦健診などでどうしても外出しなくてはならないときは、マスクやゴーグルはもちろん、つるつるした生地のアウターを着たり、アウターの上に花粉をガードするスプレーをしておいたりすると、室内に花粉を持ち込みにくくなりますし、玄関で払うのも楽になります。
おわりに:妊娠中は花粉症の薬を自己判断で飲まないよう注意!主治医に相談を
妊娠中に薬を服用するとき、最も注意が必要なのは胎児への影響です。妊娠4~7週が他の時期と比べて最も危険な時期ではありますが、市販薬を説明書通りに服用している場合は、それほど神経質にならなくても構いません。
とはいえ、飲んでしまったことは必ず主治医に伝え、指示を仰ぎましょう。また、妊娠発覚後に薬を飲みたい場合、必ず医師に相談しましょう。薬を使わずにできるマスクやゴーグルなどの花粉症対策も重要です。