出産
胎便吸引症候群とは ― 出産直後の赤ちゃんにみられる病気の特徴は
2019年9月17日
胎便吸引症候群ってどんな病気?
胎便とは、胎児が排出する無菌性の便です。この便は濃い緑色で、通常は出生後に授乳を開始してから排出されるものですが、出生間近な胎児が何らかの原因で酸素不足になると、胎児の腸が動き出してしまい、胎便が羊水の中に排出されることがあります。
これを羊水混濁と言い、混濁した羊水を吸い込んでしまうと胎便吸引症候群となる場合があります。
酸素不足の状態が一時的なものであれば、胎児にさほど影響はない場合がほとんどです。しかし、混濁した羊水を吸い込んでしまった場合、吸い込まれた胎便が気道をふさいでしまい、出生後の呼吸がうまく行かなくなることがあります。
また、吸い込まれた胎便が肺に到達すると肺の炎症の原因になり、肺感染症のリスクが高くなります。
出生時に胎便が観察された場合、呼吸窮迫が起こっていないかどうか、胸部X線(レントゲン)写真の異常所見がないかどうかなどから診断します。胎便吸引症候群が起こってもたいていの新生児は助かりますが、まれに酸素不足の状態が長引くとチアノーゼを生じ、心臓や脳に酸素が行き渡らないことでの合併症を引き起こします。脳性麻痺などの後遺症が残ることや、最悪の場合死亡することもあります。
胎便吸引症候群の場合にみられる症状は?
胎便吸引症候群を起こした新生児には、以下のような症状がみられます。
- 皮膚が青みがかった色になる(チアノーゼ)
- 呼吸が速く、息を吐くときにうめくような音を出す
- 陥没呼吸など呼吸障害が起こる
- 胸が前後に膨らむ
胎便吸引症候群では、主に酸素不足から生じる症状が多いです。皮膚が青みがかった色になるチアノーゼ、呼吸が早かったり息を吐くときにうめき声のような音が出る呼吸窮迫を始め、息を吸い込むときに肋骨の間や胸骨の下がへこむ陥没呼吸が起こることがあります。
また、肺の一部の気道が部分的に塞がれ、肺に空気を送り込めても吐き出せない状態になることがあります。その場合は肺が過剰に膨らみ、最悪の場合は破裂してつぶれてしまうこともあります。肺がつぶれてしまうと肺組織が壊れてしまうばかりか、空気が肺の周囲の胸腔に溜まる気胸を引き起こしてしまいます。
どうやって胎便吸引症候群を治療するの?
胎便吸引症候群の治療は、主に呼吸のための気道を確保するための治療が行われます。具体的には、まず出生時に胎便に覆われていた場合、新生児の口・鼻・のどから胎便を吸引して取り除きます。その後、気管に呼吸用のチューブを通し、気管の中にある胎便も全て吸引します。
酸素吸入のほか、必要があれば人工呼吸器を使用することもあります。また、感染症のリスクがあるため、抗菌薬も投与します。気胸を起こしていた場合には、胸腔穿刺などが必要となる場合もあります。
遷延性肺高血圧症を合併した場合、強いチアノーゼと循環不全を起こす場合もあります。その際には人工呼吸器のほか、強心薬などの多くの薬剤を使って治療を行います。仮死状態による低血圧やけいれんなどの症状についても治療が必要です。
胎便吸引症候群を起こした新生児は、ほとんどが助かりますが、ごくまれに重症化した場合、特に遷延性肺高血圧症を発症した場合は死に至ることもあります。
おわりに:胎便吸引症候群は出産直後の様子に注意
胎便吸引症候群は、ほとんどの新生児にとっては危険な病気ではありません。しかし、出生時の処置が不十分であったり、酸素不足の状態が長引いてしまったりすると合併症を引き起こすことがあります。新生児で胎便吸引症候群が疑われる場合は、迅速な処置が必要です。