出産
排尿障害で悩む女性、その原因になっているものは?
2022年2月9日
代表的な女性の排尿障害①:過活動膀胱
「過活動膀胱」という病気をご存知でしょうか。過活動膀胱になると、突然強い尿意が起こっておしっこが我慢できなくなる「尿意切迫感(にょういせっぱくかん)」に襲われます。切迫性尿失禁(尿漏れ)や頻尿といった自覚症状がある方も、過活動膀胱の可能性が高いです。
過活動膀胱の症状
- 突然の激しい尿意
- 漏れそうで我慢ができない(尿意切迫感)
- おしっこに行く途中で漏れてしまう
- おしっこが近い(頻尿)
- 夜中に頻繁にトイレに行く など
これらの症状がある場合は、一度泌尿器科などに相談してみると良いでしょう。診察時には尿検査を行い、医師が症状などを聞きます。症状によっては内診や尿流量検査、エコー検査なども行う場合があります。また、排尿日誌(摂取水分量、排尿時間、尿量、尿漏れの有無など)をつけ、提出することもあります。
検査の結果「過活動膀胱」と診断された場合、以下のような治療を行います。
薬物療法
症状を軽くする対症療法です。
行動療法
尿道や膀胱を支えている骨盤底筋や膀胱を鍛え、症状を軽くします。「骨盤底筋体操」や「膀胱訓練」などの体操があります。
電気刺激治療
電気・磁気で骨盤底筋に刺激を与え、骨盤底筋の収縮力を強めます。尿道や膀胱のはたらきも調整できると言われています。
代表的な女性の排尿障害②:腹圧性尿失禁
腹圧性尿失禁とは尿漏れのことで、最近女性に増えている症状です。ドラッグストアで「尿漏れ用パンツ」といった大人用のおしめを見たことがある方もいるかもしれません。
クシャミや咳をしたり、重い物を持ち上げたりする時、お腹に力が入っても、普通は尿が漏れません。それは骨盤底筋が尿道を支え、必要に応じて尿道を閉じているからです。
骨盤底筋が弱くなったり、傷がついたりすると、お腹に力が入り、腹圧がかかるだけで尿漏れを起こします。骨盤底筋が尿道を上手に締められず、結果的におしっこが漏れてしまうのです。これが腹圧性尿失禁です。
腹圧性尿失禁が起こりやすい動作
- 重い物を持ち上げる
- 咳をする
- くしゃみをする
- 笑う
- 階段を昇降する
- 坂道を登ったり降りたりする
- 走る
- テニスなどのスポーツをする
これらの動作を行うとおしっこが漏れる方は、腹圧性尿失禁の可能性があります。
病院での問診・検査・パッドテストなどで腹圧性尿失禁と診断された場合、「骨盤底筋体操」を中心とした治療をします。「骨盤底筋体操」とはその名の通り、骨盤底筋を鍛え、尿道や肛門を自分で締める力、締めたり緩めたりのコントロール力を身につける体操で、過活動膀胱にも効果的です。内臓が下がるのを防ぐ効果もあります。
腹圧性尿失禁の治療法としては「骨盤底筋体操」が効果的ですが、それでも症状が落ち着かない場合は投薬治療や手術、コラーゲン注入による尿道の筋肉強化といった治療も行います。
骨盤底筋体操
- 尿道や腟、肛門を意図的に締め、そして緩めます。これを1セットとし、2~3セット繰り返します。
- ゆっくり「ぎゅ~っ」と締めます。そして3秒ほど締めた状態をキープし、ゆっくりと緩めます。これを1セットとし、2~3セット繰り返します。
最初は締めた状態を3秒ほどキープするだけで良いですが、徐々に5秒、10秒……と時間を延ばしていきます。全部取り組んでも5分くらいの体操ですが、回数を増やし、10~20分ぐらい取り組んでみてください。
あお向けに寝て、両膝を立てた状態で行います。慣れてきたらイスに座っているときや立っているときでも出来るようになります。通勤中や家事をしている時などに、こまめにすると効果的です。
こんな症状も女性の排尿障害の原因に
女性の排尿トラブルは過活動膀胱や腹圧性尿失禁だけではありません。「骨盤臓器脱」あるいは「性器脱」と呼ばれる病気も原因となります。
「骨盤臓器脱」もしくは「性器脱」とは、子宮や膀胱、直腸といった臓器(骨盤臓器)が下降し、腟の入り口から出てきてしまう状態です。
正常な状態では、骨盤が肛門筋肉や子宮や膀胱、直腸を支えています。しかし、妊娠や出産で肛門筋肉や神経などが傷つくと、骨盤が臓器を支えきれなくなり、腟の入り口から飛び出てしまうのです。これが骨盤臓器脱(性器脱)です。
骨盤臓器脱(性器脱)の症状
- 腟の辺りにピンポン玉が触れたような感じがする
- 椅子に座ると物の上に座った感じがする
- 尿が出にくい感じがする
- 尿が出しにくい
- 排尿後の爽快感がない
- トイレが近い
- 便秘
- 尿漏れ
- 実際に腟からピンポン球のようなものが出ている など
骨盤臓器脱(性器脱)になると、尿漏れなども起こりますし、出てきた臓器を手で戻さないと排尿・排便がしにくいこともあります。
骨盤臓器脱(性器脱)の治療法
骨盤底筋体操
症状が軽度であれば、先にご紹介した骨盤底筋体操を行うだけで症状が改善する可能性があります。
リングペッサリー
リングペッサリーという器具を腟に挿入し、骨盤臓器が落ちないようにします。しかしリングペッサリーの定期チェック・交換が必要ですので、通院が必要です。
手術
根本治療としては手術で腟壁を縫って縮め、臓器が落ちてこないようにします。しかし、上記の方法では再発率が高いため、時には子宮摘出も実施します。
最近はポリプロピレンメッシュシートを使用するTVM手術が多くなっています。例えば直腸が腟壁を押して外に出てきてしまう場合、腟壁と直腸の間に、直腸をブロックするポリプロピレンメッシュシートを挿入します。
経過が順調ならば手術後3~5日程度で退院できる手術ですが、退院後1カ月ほどは重い物を持たない、踏ん張らないなど、お腹に力を入れないよう気をつけて過ごします。
排尿障害の症状緩和のために、日常生活で気をつけることは?
では、排尿障害の予防や、症状の軽減のためにはどういったことに気をつければ良いのでしょうか。
- 体を冷やさない
- 特に下半身を冷やさないことが大切です。
- 肥満を改善する
- 明らかに肥満の方は、肥満を解消することも大切です。
- 便秘をしない
- 便秘で過度に力まないようにします。
- カフェイン類を控える
- コーヒーなども控えめにします。
- アルコールを控える
- ビールなどのアルコールの摂取量を減らしましょう。
- 水分を取りすぎない
- 血管の病気がある方や、水分を多めに摂るよう医師から指示されている方などは、医師と相談して水分量を決めましょう。
- 適度な運動をする
- ストレッチや筋トレ、散歩などを継続して行います。
- 刺激物を控える
- 激辛カレーや担々麺といった刺激物は控えます。
- 早めにトイレに行く
- 特に外出時は尿意がなくてもこまめに行くようにしましょう。
おわりに:排尿障害は早期治療が大切!骨盤底筋体操も頑張ろう
尿漏れには「骨盤底筋体操」が効果的です。この体操は根気よく継続することで効果を得られますので、すぐに効果を実感できなくてもあきらめずに続けてくださいね。尿漏れも骨盤臓器脱(性器脱)も、初期段階の方が回復の見込みがあります。症状が出ている方は早めに受診しましょう。