子育て
生まれつき心臓に穴が開いていると発症する「心室中隔欠損症」とは
2024年4月17日
心室中隔欠損症ってどんな病気?
心臓の主な働きのひとつが、血液を循環させるうえでのポンプ機能です。心臓は、全身に血液を送り出す「左室」、肺に血液を送り出す「右室」とに分かれています。左室と右室では血液を送り出す行き先が違うので、誤った器官に血液を送り出さないように「心房中隔」という壁で左右が仕切られています。
しかし生まれつき心房中隔に穴が開いている「心房中隔欠損症」という病気があります。先天性の病気の中でも患者数が多いといわれています。心房中隔欠損症では血液が正常に循環せず、肺高血圧、肺うっ血、大動脈弁の変形や閉鎖不全といった症状を引き起こします。
心臓に穴が開いているときにみられる症状は?
心房中隔欠損症の症状は患者さんの年齢によって変化していきます。ほとんどの場合で思春期のあたりまでは自覚症状がありませんが、30歳前後になると心不全症状などさまざまな症状があらわれ、合併症を発症するおそれがあります。
子供のケース
新生児や乳児では、誤って流れ出す血液量が多い場合に症状があらわれます。呼吸困難、体重が増えない、風邪をひきやすい、疲れやすいなど。
大人のケース
30歳前後から症状があらわれます。不整脈、呼吸困難、息切れや動悸、だるさや疲れやすさ、下腿のむくみ、体重増加、食欲不振など。
合併症
心房細動、心不全、肺高血圧、脳梗塞、脳腫瘍など。肺高血圧が重症化すると、手術療法の選択が難しくなるので注意。
どうやって心臓の穴をふさぐの?
治療は大きく分けて、カテーテル治療、外科手術、無治療に分かれます。
カテーテル治療
カテーテルを用いて心房中隔欠損の大きさを調べ「閉鎖栓」で穴をふさぐ治療方法です。X線装置や超音波心エコー装置で心臓の状態を確認しながら、カテーテルを挿入します。治療は全身麻酔を伴います。 心血管造影用カテーテルを大腿静脈から挿入し心臓まで到達させ、経食道心エコーなどで欠損の大きさを確認し、適切なサイズの閉鎖栓を取り付けます。まれにですが穴が完全にふさがらない閉鎖不全がみられ、外科手術が検討されます。
外科手術
外科医の直視下で手術を行い「パッチ」と呼ばれる繊維布で穴をふさぎます。穴が小さい場合は繊維布を用いず、縫合してふさぐ場合もあります。全身麻酔、胸部の切開、人工心肺装置の使用を伴います。 手術死亡率が低く安全性に優れた治療法で、カテーテル治療に比べて閉鎖不全が少ないといわれています。
無治療
穴が小さい場合に自然閉鎖することがあります。しかし穴が大きかったり肺への負担がみとめられると手術を選択するのが一般的です。
穴がふさがった後に気をつけることは?
治療で欠損部分の穴をふさいだあとも合併症を発症する可能性があります。特にカテーテル治療では以下のような合併症が考えられます。
合併症の例
感染性心内膜炎、感染症、カテーテルによる静脈または心臓への穿孔、カテーテル挿入部位の血管または神経の損傷、経食道心エコーによる食道への穿孔、閉鎖栓へのアレルギー、閉鎖栓による穿孔、不整脈、脳卒中、血流障害、血腫、発熱、片頭痛、高血圧または低血圧、X線皮膚障害など |
上記は合併症の一例であり、必ずしも合併症が発生するというわけではありません。治療を検討する際はリスクを理解したうえで、不安や疑問は医師に相談しましょう。治療後は、医師の指示のもと投薬治療を行います。日常生活の注意点を守りながら治療を続けてください。
投薬治療
血栓の形成を予防するために治療後6カ月間は「抗血小板薬」を服薬します。合併症で挙げた「感染性心内膜炎」を防ぐ抗生物質を服薬することもあります。 6か月を過ぎてから投薬を続けるかは患者さんの状態に応じて医師が判断します。退院してからも定期的に経過観察が必要ですので、一定期間は通院してください。
運動制限
取り付けた閉鎖栓が心臓内部で安定するまで、約一カ月を目安に激しい運動は禁物です。バスケットボールや柔道、ラグビーなどのように体の接触を要するスポーツで閉鎖栓が外れてしまうことがあり、外れた閉鎖栓を外科手術で取り出すかどうかを医師が判断します。
スポーツ以外でも、胸部の強打や転倒による衝撃にも注意が必要です。そのような事態が発生したら、受診している医療機関に相談してください。
おわりに:30歳前後から始まった不調には要注意。早めの受診を
心房中隔欠損症は、多くの場合で大人になってから症状が急にあらわれるのが特徴です。心臓に生まれつきの病気があったとは思いもよらないことかもしれませんが、気になる症状があったら早めに受診し、病気の悪化を防ぎましょう。