子育て
自閉症と知的障害の違いは?合併することもあるの?
2022年3月9日
自閉症と知的障害の違いは?
自閉症は発達障害の一種で、社会性と対人関係の障害や言葉の発達の遅れ、強いこだわりの3つの特徴があります。
対して知的障害は知的能力に障害があり、知的能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態のことで、何らかの支援を必要とします。
以下では5つの違いをまとめました。
先天的か後天的か
自閉症は先天的な発達障害のひとつです。
一方知的障害は先天的なダウン症候群、代謝異常や脳の奇形などもありますが、妊娠22週から出産後7日未満の周産期に起こる重症の黄疸や仮死分娩、出産時に起こる脳の圧迫や酸素不足のトラブル、乳幼児期の高熱などの後遺症による後天的なものもあります。
障害があらわれる部分
自閉症は脳全体にあらわれる先天的な障害で、能力機能全般にゆがみがでてきますが、知的障害は知的能力に限定して発達が遅れた水準にとどまっている状態のことを指します。
そのため自閉症では知的能力の発達の遅れを伴うものと、伴わないものがあり、症状もさまざまです。
障害があらわれる時期
自閉症の障害の特徴は3歳までにあらわれると言われており、知的障害は知的能力の障害が18歳までの発達期にあらわれるものをいいます。
対処方法
通常、自閉症は一般的な教育方法では効果のないことが多いと言われています。これは脳の広範囲な機能の発達に障害があるため、本人の得意とする分野を生かして個々の状態に合わせて進めていくことが大切だからです。
知的障害の場合は一般の教育方法で効果が見られますが、量、速さ、定着までの反復など調整が必要です。
集団教育の成果
自閉症の場合、学校などの集団教育の成果を期待する前に個人の能力をあげることを重視しなければ、不登校など集団生活からの離脱のリスクが考えられます。
一方知的障害では集団教育の成果を感じることはできますが、本人が学びにくいところは時間をかけて教えていく必要があります。
自閉症と知的障害が合併することはある?
自閉症と知的障害ではこれらの違いがあるものの、自閉症が知的障害を伴うことも珍しくはありません。なお、知的障害を伴う自閉症のことをカナー症候群と呼び、この場合自閉症状だけではなく知的障害への支援も重要になっていきます。
自閉症と知的障害が合併した場合、改善するの?
カナー症候群の根本的な治療や手術といった、医学的な方法は確立していません。しかし本人が社会で暮らしていくために必要な技術や技能を教えたり、生活する上での困難を減らしたりするなど、教育的な援助を行うことが大切です。これを療育(治療・教育)といい、カナー症候群には大変効果的な治療法です。
療育には様々な方法がありますが、こちらでは一部を紹介します。
応用行動分析学(ABA)
行動によって伴う結果を得るまでに、不適応行動を減らし、適応的な行動を増やしていくことで周りに褒められるようになるということを、個によって細かく順を追って教えてあげる行動療法です。
TEACCH
自閉症の人は、聞いて理解するよりも、見て理解する方が得意だといわれています。これに基づき個々の特性を理解した上で、一日の活動や生活の流れなどを絵で示したり、食事をとる場所、おもちゃで遊ぶ場所、絵本を読む場所など目的別に場所を分けたりしてその人が理解しやすい環境をつくる工夫・方法です。
コミュニケーション方法では言葉が出ない、遅いことを考慮し、ジェスチャーや動作、指差しなどで伝えることから、カードや写真、文字を使うことへと順に教えていきます。
SST
対人関係をうまく行なうための技能を身につけ、ストレス対処や問題解決ができるスキルを習得する訓練です。また、障害の特性を自分で理解し、自己管理を行うことも身に付けていきます。
知的障害で療育手帳を取得するメリットは?
療育手帳とは、知的障害と判定された人を対象に都道府県知事または政令指定都市市長から交付される障害者手帳のことで、日常生活に支障がある方が一貫した療育・支援を受けられるよう、様々な制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。
保育や教育面での援助を受けられたり、就労に向けての支援を受けられたり、交通機関や医療費、施設などの割引や、税の減免や控除に役立ちます。
自閉症や知的障害の人のための就職支援
自閉症や知的障害を抱える人でも就労しながら社会の一員として生活する人は多くいます。しかし、障害のために様々な困難を抱えているケースも多々あり、公的な就労支援サービスが普及しています。
自閉症や知的障害の人は以下のような就職支援を受けることができますので、利用してみましょう。
ハローワーク
ハローワークでは障害を持つ人に向けた窓口が設置されており、自閉症や知的障害の人に向けた求人を紹介してもらうことができます。また、職業訓練所や自助グループなど障害による困難さを克服する訓練を行う機関を紹介してもらうことも可能です。
地域障害者就職センター
ハローワークと連携した機関であり、専門家によって職業リハビリテーションを行うことができます。リハビリによって得られた職業能力を活かす職場を紹介してもらうこともでき、就労に関する選択を拡げることつながります。
障害者就業・生活支援センター
障害者を雇用する企業や病院、保健所や精神保健福祉センターなど公的な支援機関、学校などと連携をとって、就業や生活の困難さを地域で解決していくための機関です。専門員に就業の希望や悩みを相談すると、それに適した職場や就労に必要な治療を受けることができる医療機関などを紹介してもらうことが可能です。
おわりに:個々に合った療育を受けることが可能
ひとりひとりに個性があるように、症状のあらわれ方も人それぞれです。その人の特徴や性格にふさわしい療育やサポートを行うことで、本人が生活、自立しやすい環境を作っていくことが可能になるでしょう。
なお、療育は本人や家族にとって、時間的にも労力的にも負担の少ないものではありません。そのためにも良い専門家や医療機関を見つけて、チームとして取り組んでいくことが大切です。