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アトロピン投与、手術・・・肥厚性幽門狭窄症の治療法を解説

2021年9月3日

肥厚性幽門狭窄症(ひこうせいゆうもんきょうさくしょう)とは?

肥厚性幽門狭窄症は、生まれたばかりの乳児に特有の症状で、どちらかというと男の子がかかりやすいといわれています。生後2週から3か月ぐらいまでの赤ちゃんが、ミルクを飲み込めずに吐き出してしまう病気です。

肥厚性幽門狭窄症にかかっている赤ちゃんは、胃の出口である「幽門」を取り囲む筋肉の厚みが一般のサイズよりも大きくなっていて、幽門の幅が狭まっている状態です。そのために、ミルクが腸へ出て行かず胃の中に溜まってしまうため、飲める量にすぐ限界が来て、口から出してしまいます。肥厚性幽門狭窄症の嘔吐は、噴水のように勢いよく吐き出すのが特徴です。
肥厚性幽門狭窄症でない赤ちゃんも、ミルクを吐き出すことはありますが、大半は口元からダラッと垂れ流すような吐き方になります。

なぜ肥厚性幽門狭窄症にかかる赤ちゃんがいるのか、現代の医学では分かっていません。生後間もない赤ちゃんや、生後6か月から1年の幼児にはほとんど見られない原因についても不明であり、今後の研究が期待されています。

肥厚性幽門狭窄症の診断法

肥厚性幽門狭窄症の治療が遅れると、体重減少が起こり成長が遅れます。治療が遅れると出生時の体重を下回るケースもあり、生命維持にも危険な状態にもなるおそれがあります。
肥厚性幽門狭窄症の診断には、超音波検査で幽門の厚みを画像で確認する必要があります。幽門筋の厚みが4ミリ以上で、幽門と十二指腸を繋ぐ幽門管が14ミリ以上あることが確認されれば、肥厚性幽門狭窄症と診断されます。

代表的な2つの治療法について

有効な治療法としては、内科的な投薬治療と、外科的な手術の2種類があります。

・内科的治療
幽門の周囲にある分厚くなった筋肉を緩めて、幽門を広げるため、「硫酸アトロピン」という薬を、ミルクをあげる前に投与します。

・外科的治療
幽門を取り囲む筋肉を切開することで、幽門の大きさを広げる手術です。「粘膜外幽門筋切開術手術」といいます。

どちらの治療法にもメリット・デメリットが・・・よく相談して選ぶことが大切

内科的治療である「硫酸アトロピン療法」は、赤ちゃんの身体に傷を付けず、麻酔などで身体に負担をかけないメリットがあります。
ただし、薬物の作用で脈が速くなる副作用がありえますし、即効性を得られない場合が多いです。1~2週間が経っても嘔吐が止まらない場合は、効き目が認められないものとして、外科的治療への移行が検討されます。

「粘膜外幽門筋切開術手術」は、手術の翌日からさっそくミルクを飲むことができ、即効性が認められます。また、ヘソのあたりからメスを入れれば手術の傷口も目立ちません。もちろん麻酔と切開のリスクを伴いますが、手術の安全性は高く、内科的治療ではなく手術治療をまず検討する例もあります。

どちらの治療法にもメリットとデメリットがあるので、担当医と相談しながら納得のいく治療を選ぶようにしましょう。

おわりに:事前説明をもとに納得のいく選択を

肥厚性幽門狭窄症は、食欲は旺盛なのに、消化管の構造のせいでミルクを吐き出してしまう、赤ちゃんにとって深刻な症状を伴う病気です。発症の原因はわかっていませんが、治療法は確立されています。ただし、内科療法と外科療法には、両者ともに一長一短があるので、赤ちゃんの将来のために、担当医と相談しながら慎重に選択しましょう。

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