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軟骨無形成症とは ― 原因・症状・治療法を解説

2020年3月16日

軟骨無形成症ってどんな病気?

軟骨無形成症とは、「成長軟骨」と呼ばれる、骨の成長を司る部分に何らかの異常があり、低身長・四肢の短さ・指の短さなどを引き起こす疾患です。全身の骨に異常を認めるタイプの骨系統疾患の中でも、とくに代表的な疾患です。生まれつきの疾患で、2万人に1人くらいの発症率とされ、推定では6,000人程度の患者さんがいるとされています。

原因は「線維芽細胞増殖因子受容体3型」という遺伝子に変異があること、とわかっているのですが、遺伝子に変異があることで、どのようにこの疾患が引き起こされているのかといったメカニズムの部分に関してはまだよくわかっていないことも多いです。

患者さんの多くは、上記の遺伝子の変異が突然現れて発症するため、家族に同じ疾患の人はいません。つまり、両親や親戚は正常な遺伝子タイプを持っているのに、何らかの原因で突然変異が起こり、生まれてきた子は軟骨無形成症になる、というケースが圧倒的に多く、胎内にいる頃に超音波検査で骨が短いことがわかったり、生まれてまもなく特徴的な顔つきや四肢の短さ、指の短さなどで気づいたりすることが多いです。

また、正常な遺伝子タイプの両親から突然変異で軟骨無形成症の子どもが生まれた場合、その子の次に生まれてくる子が再び軟骨無形成症となる確率は極端に低いことがわかっています。ですから、正常な遺伝子タイプの両親から生まれた軟骨無形成症の人で、兄弟姉妹は正常な遺伝子タイプを持っているという人もたくさんいます。

しかし、この疾患自体は「常染色体優性遺伝」というタイプの遺伝をするため、両親のどちらかがこの疾患を発症している場合、50%の確率でこの疾患を持った子供が生まれます。両親ともこの疾患を発症している場合、50%の確率で親と同じくらいの症状を持った子どもが生まれ、25%が正常、残りの25%は両親よりも重い軟骨無形成症となることがわかっています。

発症すると、どんな症状がみられる?

軟骨無形成症の代表的な症状は、正常な遺伝子タイプを持つ人と比べて手足が短く、低身長であるということが挙げられます。成人男性で130cm、女性で124cm前後までしか成長しません。また、腕を下ろした状態で指先が太もものつけ根部分あたりまでしか届かない程度に腕も短く、指も短いです。さらに、手を広げたときに中指と薬指の間が広い「三尖手」という状態になるのが非常に特徴的です。

全身の骨に対して影響が及ぶことから、低身長や腕・指の長さなど外見上の問題だけではなく、以下のような合併症が見られることもあります。

  • 大後頭孔の狭窄や水頭症など、脳神経に関する問題
  • 睡眠時無呼吸症候群など、睡眠障害
  • 中耳炎、伝音性難聴、浸出性中耳炎、真珠腫など、耳に関する問題
  • 脊柱管狭窄、脊柱障害、腰痛、下肢痛など、脊椎や脊髄に関する問題
  • O脚や関節可動域など、下肢に関する問題
  • 咬合不整(噛み合わせの異常)、歯列不整など、歯に関する問題

これらの合併症に関しては、発症頻度や重症度に個人差が大きく、受診すべき診療科も多岐にわたります。しかし、実際に乳児期〜学生期の患者さんを見ている医師の意見によれば、子供時代は重篤な合併症を発症することは少なく、比較的元気に学校生活や日常生活を楽しめる子供が多いようです。

軟骨無形成症の治療法は?

軟骨無形成症は遺伝子の変異によって起こるため、根本的な治療法は残念ながら存在しません。そのため、対処療法として成長ホルモンを投与したり、骨延長手術を行い、手足を伸ばしたり身長を伸ばすことになります。それぞれ、以下のような方法で治療を行います。

成長ホルモンの投与

  • 成長ホルモンは正常に分泌されていることが多いものの、さらに投与すると身長が伸びやすくなることが期待される
  • 治療開始年齢は、大後頭孔狭窄症が悪化する心配がなくなる3歳以降
  • ほぼ毎日、自宅で本人や家族が注射を行い、骨端線が消滅する思春期までは治療を継続できる
  • 治療の効果は最初の1年間が最も高く、年数を重ねるごとに効果が減少する

骨延長手術(仮骨延長法)

  • 骨折した骨が、ギプス固定すると自然につながるような骨の自己修復力を応用し、骨を伸ばす方法
  • 伸ばしたい骨を手術で切断し、上下を「創外固定器」という器具で固定して仮骨ができるのを待ち、徐々に延長していく
  • 手術を行う場合、自分で理解して治療に取り組める10代前半から、筋肉や腱などに柔軟性がある20代までに行う
  • 延長速度は1日約1mmで、前後の期間を含め、延長には1cmにつき1カ月かかる
  • 軟骨無形成症では、大腿・下腿と上腕を延長できる

これらの治療法はあくまでも対処療法ですから、必ずしも行わなくてはならないというわけではありません。また、関節の状態や脊柱管狭窄症などの合併症を発症している場合は、骨延長手術を行えないこともあります。

他にも、時期によって気をつけるべきことがあります。必ずしもsの時期を過ぎれば安全とは言えませんが、時期によって起こりやすい合併症なども合わせて見ていきましょう。

乳幼児期に気をつけることは?

大後頭孔の狭窄・水頭症・無呼吸症などの合併症を引き起こす可能性がありますので、生後数年間は定期的な検査が必要です。しかし、実際に治療が必要な状態にまで至る例はそれほど多くありません。また、首のすわりや歩行など、運動能力の発達は同年代の子どもと比べて遅れるものの、知能の発達について大きな問題はないとされています。もし、運動能力の発達があまりにも大きく遅れているようなら、合併症の可能性もありますので、主治医の診察を受けましょう。

乳幼児期は、中耳炎や鼻炎などを起こしやすい時期でもありますので、慢性中耳炎や浸出性中耳炎に対しても注意が必要です。また、中耳炎によって聴力が低下することが言語発達に悪影響を及ぼす可能性もありますので、場合によっては耳鼻科的な治療が必要になることもあります。

学童・学生期

同年代の子どもたちとの身長差が目に見えて大きくなってくる時期ですから、生活上の不便や、心理的負担などに十分配慮する必要があります。また、O脚がある場合は整形外科的な治療が、噛み合わせや歯列の歪みがある場合は歯科・口腔外科的な治療が必要となることもあります。成長ホルモン治療や骨延長手術を行う場合は、この時期に行うことが多いです。

成人期以降

軟骨無形成症では、比較的若い年代から脊柱管狭窄症を発症することがあり、それに伴ってしびれや脱力、下肢の麻痺、神経因性膀胱による排尿障害などが見られることがあります。このような症状が出た場合、自然に治癒することはほとんどありませんので、症状に気づいたら早めに病院を受診しましょう。

また、この疾患そのものは寿命に影響するものではないとされていますが、肥満や睡眠時無呼吸症候群などの影響で突然死を引き起こすこともあるという報告もありますので、体重の管理や合併症を放置しないなど、日頃からよい生活習慣を心がけることが大切です。

さらに、この疾患を持つ女性が妊娠・出産する場合は、骨盤が狭いことから経過を注意深く観察するとともに、自然分娩ではなく帝王切開での出産が推奨されます。

おわりに:軟骨無形成症は遺伝子の突然変異によって生じます

軟骨無形成症は、「線維芽細胞増殖因子受容体3型」という遺伝子に異常が起こり、骨が十分に成長できず、正常な遺伝子タイプの人と比べて手足や指が短くなってしまう疾患のことです。また、全身に合併症を引き起こす可能性がありますので、十分に注意が必要です。

運動能力の発達は遅れることが多いですが、知能や寿命に影響する疾患ではありません。日頃から良い生活習慣を心がけ、体調不良があればすぐに主治医に相談しましょう。

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