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自律神経の不調の原因と代表的な症状 ― 早期発見のために気をつけるべき変化とは
2022年10月12日
自律神経の不調が引き起こす症状
自律神経(交感神経と副交感神経)の働き
自律神経には、心身を活動的な状態や緊張状態へ促す「交感神経」と、休息状態やリラックス状態へ促す「副交感神経」の2種類があります。交感神経と副交感神経は、それぞれが対になり活発化と沈静化を繰り返してバランスをとりながら、全身の臓器や組織の働きを調整しています。
たとえば、心身が活動的な状態や緊張した状態にならなければいけないときは、それぞれの臓器や組織も活発に活動する必要が出てきます。酸素や栄養をどんどん供給するために、心拍数を増やし、血管を収縮させて血圧を上昇させます。このときに活性化して優位になるのが交感神経です。
対して、心身が休息している状態やリラックスした状態にならなければいけないときは、心拍数を減らして心臓や血管への負担を少なくし、効率よく栄養を消化、吸収するために消化器官の働きを促します。このときに活性化して優位になるのが副交感神経です。
また、活動的な状態、緊張した状態にならなければいけないときは、周囲に危険がないかを敏感に察知できるようにするために、交感神経は精神面の緊張を高めて、「不安な状態」を作ります。対して、休息している状態やリラックスした状態にならなければいけないときは、しっかり睡眠や休息をとれるにするために精神面の緊張をゆるませ、心身をリラックスした状態に促すのです。
リラックスのためには副交感神経が大切ではありますが、仕事や日常活動には「緊張が必要な場面」もあるため、交感神経も適度に働かせる必要があります。交感神経と副交感神経が、それぞれ適度に働いている状態が、自律神経のバランスが整っている状態です。
自律神経のバランスが崩れたときの症状や不調
交感神経と副交感神経のバランスが崩れた状態が続くと、ホルモンバランスが崩れたり、体内の器官や組織がうまく働かなくなってしまったりすることで、以下の症状や不調が現れるようになります。
- 心や精神の症状、不調
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- 落ち込む
- イライラする
- やる気が出ない
- 気持ちの波が激しい
- 疲労、痛みなど、感覚的な症状、不調
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- 寝つきが悪い、眠れない、寝起きが悪い
- 疲労感、倦怠感がある
- 頭痛
- めまい、ふらつき
- 冷え
- 目の疲れ、眼精疲労
- 耳鳴り、聴覚の異常
- 口やのどの不快感
- 感覚低下、まひ
- 筋骨格系に関わる症状、不調
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- 肩こり
- 腱鞘炎
- 筋肉がピクピクする、ひきつる
- 筋肉の緊張
- 消化器系に関わる症状、不調
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- 食欲不振
- 胸焼け
- 胃痛、腹痛
- 便秘
- 下痢
- 循環器系に関わる症状、不調
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- 高血圧
- 低血圧
- 動悸
- 息切れ
- その他の症状、不調
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- 微熱
- 頻尿
- のぼせ、ほてり
- 皮膚の異常
- 風邪を引きやすくなる
- 異常発汗、手汗
- 体重減少、体重増加
自律神経のバランスが崩れてしまう原因
自律神経のバランスが崩れる原因は、ストレス、不適切な生活習慣、心身の病気・不調に大きく分けられます。原因は、ひとつだけの場合もありますが、複数の原因が複雑に絡み合っていることもあります。
自律神経のバランスが崩れた状態が長く続くと、自律神経失調症を発症し、回復までに時間がかかる場合があります。また、病気が原因で自律神経のバランスが崩れて自律神経症状が出ている場合は、原因となる病気自体の治療も必要です。
自律神経症状が疑われるような「気になる症状や変化」に気づいたときは、早めに医師に相談しましょう。
自律神経症状を引き起こす原因の具体例
- 原因となる生活習慣の具体例
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- 睡眠不足、不規則な睡眠習慣
- 夜ふかし、昼夜逆転の生活
- 不規則な食習慣
- 栄養が偏った食事
- 暴飲暴食、過度な食事制限
- カフェイン飲料やアルコール飲料の摂り過ぎ
- 運動不足、運動のしすぎ
- メリハリのない単調な生活
- 引きこもりの生活
- 原因となるストレスの具体例
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- 仕事、学校、ご近所つき合いなどの人間関係
- コミュニケーションの機会がない、孤独
- 仕事や勉強のプレッシャー
- 残業や介護などによる心身の負担、過労
- お金、仕事、勉強などの不安
- 強い緊張状態、長期間の緊張、何度も繰り返す緊張
- ケガ、痛み
- 重労働
- 人に頼れない環境
- 室温など温度による負担(部屋の寒さや暑さ、イスや床の冷たさなど)
- 気温や気圧など、天気や気候の問題
- 騒音、不快な音
- 強い光、不快な光(窓からの直射日光、電灯のチラツキなど)
- タバコの煙、塗料、殺虫剤、除草剤、排気ガスなどの化学物質
- 原因となる心身の病気・不調の具体例
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- 甲状腺機能障害
- 更年期障害
- パーキンソン病
- レビー小体型認知症
- 不眠症、睡眠障害
- うつ病、不安障害
- 適応障害、パニック障害
- 寝たきりの状態
- その他の原因の具体例
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- 幼少期の環境
- ADHDや自閉症スペクトラムなどの発達障害、発達の多様性
自律神経の不調を改善するために大切なこと
自律神経の不調にはさまざまな原因があることは上記で説明しましたが、現代においては、ストレスや生活習慣が原因になっていることも多いといわれています。
ストレスや生活習慣が原因の不調は、ストレスを避けてこまめにストレスを解消する、食事や運動、睡眠などの生活習慣を見直すことで改善することもありますが、単独の対策やセルフケアだけでは難しい場合もあります。
自律神経の不調の改善には、自律神経症状を緩和する対症療法と原因を取り除く対策の両方が必要になる場合があります。セルフケアしても良くならない場合や原因がわからない不調が続いている場合は、早めに医師に相談しましょう。
自律神経の不調が引き起こす「ちょっとした変化」に注意
自律神経の不調は、「はっきりとした症状」として現れないことがあります。どのような病気や不調も同様ですが、早期発見と早期対策(早期治療)が大切です。
はっきりとした症状が現れていなくても、以下の変化がみられるときは注意しましょう。また、自分自身では気づきにくい場合もありますので、家族や友人、同僚など、周囲の人も気を配るようにしてください。
- 疲れやすくなった、疲れがとれにくくなった
- こりや痛み、重だるさを感じることが多い
- 朝、気持ちよく起きられない
- 深夜によく目が覚める
- 昼間に眠気を感じることが多い
- 夢を見ることが多くなった
- 頭が重い、スッキリしない
- 頭痛が増えた、ひどくなった
- ふらふらする、ふわふわする感覚がある
- 聞こえ方が悪くなった、聞こえ方に違和感がある
- 手足が冷えることが多い
- いつも胃が重い、お腹が張っている
- 食べられる量が急に少なくなった
- 好きなものでも食べる気がしない
- 下痢や便秘が増えた、下痢気味・便秘気味になった
- 口の中が荒れたり、ただれたりすることが多い
- のどや口が乾燥しやすくなった
- 風邪を引きやすくなった、風邪がなかなか治らなくなった
- 花粉症や風邪ではないのに、鼻詰まりがする、のどに違和感がある
- 少しのことで腹が立ったり、イライラしたりしてしまう
- 不平不満や八つ当たりが増えた
- 仕事や勉強がはかどらない、やる気が出ない
- 集中力が続かない
- 仕事の効率が低下した。ミスや忘れ物が増えた
- 他人と会うのが億劫になった
- 表情が乏しくなった
- ダイエットしていないのに体重が減った
- 手のひらや、脇の下に汗をかくことが増えた
- 急に息苦しくなることがある
- 原因がわからないのに、胸が痛くなることがある
- 一瞬ドキンとする、嫌なドキドキ感がある
おわりに:自律神経の不調の多くはストレスや生活習慣が原因。ただし病気が原因のこともあるので早期発見が大切
自律神経には交感神経と副交感神経があり、交互に活性化しながらバランスをとっています。ストレスや生活習慣、何らかの病気が原因で自律神経のバランスが崩れると、頭痛や肩こり、めまい、耳鳴り、胃腸症状、動悸、息切れ、心の不調などの自律神経症状が現れるようになります。
自律神経の不調が長引くと自律神経失調症に進行する場合があり専門的な治療が必要になります。また、病気が原因の場合は原因となる病気の治療も必要です。病気が原因の場合はもちろんですが、ストレスや生活習慣が原因の自律神経の不調も早期発見が重要になってきます。はっきりした症状が現れないことも多いので、気になる症状や変化に気づいたときは、早めに医師に相談しましょう。