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繰り返す原因不明の顔や手足の腫れ・むくみ…… 遺伝性血管性浮腫かもしれません

2023年3月15日

HAEってどんな病気ですか?

遺伝性血管性浮腫(HAE)の患者数は5万人に1人という報告があり、日本でも約2,500人の患者さんがいると考えられています。しかし、治療を受けたことがある人は約450人と、推定患者数に対してずいぶん少ないです。初発年齢は比較的若く10代から20代といわれていますが、診断率が約20%、初発から診断までにかかった期間が平均して15.6年ということからもわかるように、HAEという病気は正しい診断につながりにくいのが現状です。
一方、欧米の診断率は70%と日本に比べて高く、それはHAEという病気の一般の認知率の違いによるものと考えられます。今後、日本でもHAEという病気の認知が広がることで診断率も上がり、診断までに要する期間も短縮されることが期待されます。

HAEにはどのような症状がありますか?

HAEは全身に繰り返す腫れやむくみが特徴で、なかでも皮膚と消化管に多く起こります。消化管に腫れやむくみが生じた場合、腹痛などの消化器症状があらわれます。のどに腫れが起こると最悪の場合、窒息などで生命を脅かすおそれがあります。症状の多くは発症してから24時間程度でピークを迎え、数日で自然に消失します。

HAEの主な症状…皮膚症状

  • 顔面やくちびるの腫れ
  • 手足・腕・足の腫れ など

HAEの主な症状…腹部の症状

  • 激しい腹痛
  • 腹部膨満感
  • 吐き気・嘔吐
  • 下痢 など

HAEの主な症状…咽頭の症状

  • 嚥下困難
  • 声が変わる、声がかれる、発声困難
  • 呼吸困難感や息苦しさ など

 

これらの症状はHAEに特有というわけではありません。腹痛はHAE以外の多くの病気で起こる症状ですし、皮膚のむくみも同様です。また、手足やくちびるが腫れる皮膚症状はじんま疹と間違われやすく、症状からだけではHAEと診断するのは難しいかもしれません

HAEかも……どのような検査がありますか?

実際にあらわれた症状と問診で得られた患者さんの情報をもとにHAEの可能性があるのか、医師は判断します。症状や問診からHAEが疑われる場合、血液検査を行います。
医師の問診に答える際には、ご自身の腫れやむくみ、腹痛についての特徴を把握しておくとよいでしょう。こちらのセルフチェックシートで自分の症状と照らし合わせてみてください。

「遺伝性」という言葉が病名につくことからもわかるように、この病気の発症には遺伝的な要因があり、すべての患者さんに当てはまるわけではありませんが、家族に同じような症状を経験した人がいることがあります。受診の際には、自分自身が経験した腫れやむくみ、腹痛などの症状を伝えるとともにご家族が経験した症状などについても伝えるようにしましょう。

なかには、家族に同じような症状を経験した人がいないものの原因不明の腫れやむくみを繰り返すHAEの患者さんがいます。このような症例を「孤発例」といいます。孤発例は、問診で疑っても家族歴がないために診断が難しく、鑑別のためには遺伝子検査を行う場合があります。

HAEの治療は?

HAEの治療には、いま出ている症状を抑えるための治療(急性発作時の治療)と発作が起きないように予防的に行う治療があります。残念ですが、現状ではHAEそのものを治す治療はありません。しかし、正しい治療を受けることで、普段と変わらない生活を送ることが可能です。そのため、自身の病気がHAEだと正しい診断を受けることがとても重要です。
しかしHAEは患者数が極端に少ないため、HAEの診断や治療を経験したことがない医師が大半です。繰り返す原因不明の腫れやむくみ、腹痛に悩まされている方は、HAEの相談が可能な病院へ受診することをお勧めします

▼ HAEについて相談できる医療機関検索

ふだんの生活で気をつけることは?

HAEの発作を誘引するものに精神的ストレスや過労などの肉体的ストレスがあります。できるだけ心身のストレスを軽減するようにしましょう。とはいっても、現代社会でストレスフリーに生活することは困難です。なるべく無理をせず、適度な運動を行ったり、趣味を楽しんだりと自分にとってのストレス解消法を見つけるようにしてください。日々の生活では栄養バランスのよい食事を規則正しくとることを心がけ、睡眠時間も十分確保できるとよいでしょう。

抜歯などの歯科治療や手術はHAEの発作を引き起こすきっかけになることがあります。これらの治療を行うことが決まったら、事前に主治医に相談し、予防的な治療を行うなどするようにします。
また、病気ではありませんが、生理や妊娠・出産が発作を引き起こす場合があります。妊娠・出産については主治医と産婦人科の医師に相談をしましょう。
服用している薬が発作の原因になることもあるので、HAE以外の病気で受診する際には、HAEであることを医師に告げてください。同時に主治医にもほかの病気で別の病院に通院していることを相談しましょう。

しかし、注意をしながら生活していてもHAEの発作が起こることはあります。そんなときは決して自分を責めることはせず、急性発作時の治療薬を処方されている人は速やかに自己注射し、処方されていない人は病院で治療を受けてください。

さらに詳しくHAEについて知りたい方は下記のサイトへアクセスしてください。

おわりに:HAEについて知りたい、気になることがある人は「HAE-info」で確認してみよう

HAEと診断されずに症状に悩まされている方々に対して、正しい診断をして適切な治療に導くことで苦しみを救いたい、そんな思いを共有する医療従事者、学会、患者団体、製薬企業、IT企業などが協働し、それぞれの専門性や創造性を通じて、日本における適切な早期診断および診断率の向上を目指しているのが「一般社団法人 遺伝性血管性浮腫診断コンソシアーム(DISCOVERY)」です。

「一般社団法人 遺伝性血管性浮腫診断コンソシアーム(DISCOVERY)」では、HAEに関する情報サイト「HAE-info」を運営しています。HAEについて知りたいと思われたら、「HAE-info」をご覧ください。ご不明点はこちらから事務局までお気軽にご相談ください。

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