妊娠
妊娠糖尿病でインスリンは必ず投与する?どんなふうに治療するの?
2022年1月12日
妊娠糖尿病ってどんな病気?
妊娠前は症状のなかった女性が、妊娠をきっかけにして糖代謝に異常をおこし、血糖値が高くなってしまう病気が「妊娠糖尿病」です。もともと遺伝的・体質的に糖尿病の資質を持っていた女性が、胎盤から分泌されるホルモンによって血糖の上昇を抑えられなくなり発症するケースが多いといわれています。
妊娠糖尿病は、妊娠前から糖尿病に罹患していた妊婦との区別のために「糖代謝異常症」とも呼ばれ、さらに以下2つに分類されます。
- 妊娠が進み、インスリン抵抗性が上昇し高血糖となる、中期に判明する「妊娠糖尿病」
- 妊娠初期から高血糖となる、「妊娠を契機に判明した明らかな糖尿病」
ちなみに、妊娠前から糖尿病を発症していて妊娠中も引き続き血糖が高い状態が続く場合は「糖尿病合併妊娠」と区別して呼称されます。
なお、妊娠中に発症する糖代謝異常には「劇症1型糖尿病」もあります。
劇症1型糖尿病とは、妊娠をきっかけに膵臓にあるβ細胞が急速に破壊されることが原因発症し、めまいや昏睡、腹痛などを引き起こすケトアシドーシスに陥ることがあります。
糖尿病合併妊娠や妊娠糖尿病など妊娠に伴う血糖値上昇は、いずれも放っておくと赤ちゃんとお母さんの命に危険を及ぼすリスクもあるので、早急に治療すべき病気なのです。
妊娠糖尿病の治療では、必ずインスリンを打つの?
妊娠糖尿病の治療は、食事療法と運動療法をメインに行われます。
- 食事療法
- 食事療法では医師や保健師、栄養士などから適切な摂取カロリーで血糖値が急激に上昇しにくい食事内容や、食事方法の指導を受けながら実践し、以下に留意した内容・方法で食事を摂るよう、指導を受けることになります。
- お母さんと胎児の成長、健康維持に必要なエネルギー量を摂取する
- 食後の急激な血糖値の上昇が起こらないよう、食事内容と食べ方を工夫すること
- 糖尿病ケトアシドーシスの原因となるケトン体を、空腹時に産出させない
- 正常な妊婦さんの30%減を目安に、摂取カロリーを制限する
- 1日の総摂取カロリーが適量を超えないよう、食事を6回程度に分けて食べる
- 運動療法
- 運動療法では、毎日欠かさずできる運動や体操の指導を受けることになりますが、基本的には散歩やウォーキングなど、身体に負担がかからない程度の軽めのものが推奨されています。また、肥満が見られないようであれば、指導されないこともあります。
基本的には、このような食事療法・運動療法を続けながら血糖値を計測・管理し、無事に出産を迎えられるよう治療してくかたちになります。
妊娠糖尿病でインスリンを打つのはどんなとき?
食事や運動での血糖コントロールがうまくいかない場合は、インスリン投与による治療が行われます。
インスリンとしては妊娠中の使用でも安全性が確認されている下記のようなものが使用されます。
- 即効型インスリンのR(ノボリン®R、ヒューマリン®R)
- 中間型インスリンのN(ノボリン®N、ヒューマログ®N)
- 超即効型インスリンのインスリンリスプロ(ヒューマログ®)
- 超即効型インスリンのインスリンアスパルト(ノボラピッド)
- 持続型インスリンデテミル(レベミル®)
なお、インスリンの効き目は妊娠時期によって大きく変わり、妊娠初期には効きやすく、妊娠後期になって出産が近づくほど効きにくくなります。これに伴い、妊娠後期にかけてインスリン投与の量や頻度は増えるのが一般的です。
妊娠糖尿病の治療でインスリンを使用するときは、医師の指示に従って種類や量を適宜変更することになりますので、必ず指示は守りましょう。
インスリン投与がお腹の赤ちゃんに与える影響は?
妊娠中にインスリン投与しても、胎盤を通してインスリンが赤ちゃんに届くことはありません。
上記で紹介したインスリンであればおなかの赤ちゃんに悪影響が及ぶことはありませんので、安心して治療を続けてください。
おわりに:妊娠糖尿病の治療は、インスリンよりも食事と運動の指導をメインに行う
妊娠をきっかけとする身体の変化から、血糖値が高い状態が続くようになる妊娠糖尿病。その治療は、まず薬を使わない食事療法と運動療法から行われます。食事と運動指導を続けても血糖値が正常に戻らない場合のみ、インスリンを投与して治療します。
また、妊娠中に適しているインスリンであれば、妊娠中に投与しても赤ちゃんに悪影響がないことが確認されています。医師の従いながら、血糖コントロールを続けていきましょう。