妊娠
臨月のおりもの~「粘液栓」と「おしるし」は別のもの~
2019年5月1日
粘液栓とは何ですか?
粘液栓は、妊娠中に子宮頸部にある透明なゼリー状のかたまりです。手でつまめるくらいの粘度があり、羊水と同様に、出産の準備が整うまで、外界から赤ちゃんを守る役割を担っています。
出産間近になると、子宮口が広がって粘液栓が排出されます。いよいよ出産の準備が整った、というサインのひとつです。粘液栓は無理に排出してしまうと感染症のリスクを高めます。焦らず、自然に出てくるのを待ちましょう。
粘液栓が排出されてからどのくらいで陣痛がきますか?
粘液栓が出てから陣痛がくるまでの時間は個人差があり、出産の数週間前に出る人もいれば、粘液栓が出てすぐ陣痛が来る人もいます。
ただ、もし予定日の数週間前に粘液栓が出てきても、心配する必要はありません。子宮頸部は、子宮口を保護し、感染を予防するために粘液を作り続けているため、粘液栓がなくなっても赤ちゃんは守られています。
おしるしとは何ですか?
おしるしは、予定日が近づいたときにみられるサインです。ピンクまたは茶色の、粘り気のあるおりもので、子宮頸管の血管が破れたことを表しています。もし妊娠37週目以前におしるしのようなおりものが出てきた場合や、はっきりと出血していることに気づいた場合は、すぐに医師に連絡して対応を確認してください。
正常なおしるしの色と量は?
正常なおしるしは、妊娠37週~42週未満までの正産期に表れる粘り気のあるもので、少量の出血が混じっているのが正常と言われています。色は ピンク~赤~茶色で個人差が大きく、量もおしるしが全くなかった人から月経(生理)くらいの量が出る人までさまざまです。
破水や異常出血とどのように見分ければいいですか?
おしるしと区別しなくてはいけない症状として、破水と異常出血があります。
破水はさらさらとした透明~白濁色の液体です。このような液体が出続けるときは破水の可能性があるので、すぐ病院に連絡してください。また、下記のような症状がある場合は、前置胎盤や胎盤早期剥離といった異常が疑われるので、すぐに病院へ向かいましょう。
- 出血量が通常の月経量よりも多い
- 出血が繰り返し起こる
- 腰やお腹に張りや痛みがある
また、異常出血は、妊娠中は腟や子宮の組織がデリケートになっているため、内診の後に起こることがあります。この出血はおしるしではありませんが、すぐに出血が治まった場合は問題ありません。
おしるしから出産までの期間はどれくらいですか?
おしるしが出てから陣痛まで数時間という人もいますが、通常はおしるしがきてから1日か2日以内に陣痛がくると言われています。
※1週間以上かかる人もまれにいます。
ちなみに、おしるしは粘液栓とは異なります。どちらも粘液であるという共通点はありますが、おしるしは血が混じった分泌物であるのに対し、粘液栓は数回にわたって排出されるゼリー状のかたまりです。おしるしはお産がもうすぐであることを意味するのに対し、粘液栓はそろそろお産が近づきつつあることを意味しています。
おしるしがないときは?
おしるしの色や量には個人差があるように、おしるしが現れない場合もあります。
一般的には、前駆陣痛のあとにおしるしがあり、その後に陣痛が始まると言われていますが、前駆陣痛やおしるしが出ない場合もあれば、前駆陣痛とおしるしが同じタイミングでくる場合もあります。
このため、おしるしがなくても陣痛に対処できるよう準備しておくことが大切です。予定日が近づいてきたら、いつ出産してもいいように準備しておきましょう。
いよいよ出産が近づいてきたときに何を準備すればいいですか?
出産に向けて、これまで経験したことのない体調の変化にとまどいながら過ごした日々も、もう少しでゴールです。粘液栓が出た場合は、慌てず医師や看護師に伝えましょう。
また、お産のイメージトレーニングをするのもおすすめです。無痛分娩の人は、実際のお産の流れを確認してみるのもよいでしょう。おしるしが出た場合や、陣痛が始まった場合は、荷物を準備して病院に連絡してください。
おしるしに備えて準備しておくもの
おしるしは、出産直前に必ず出るわけではありません。出るタイミングは人それぞれ違いますし、おしるしが出ない人もいます。おしるしがいつ出てもいいように準備をしておくことが大切です。
おしるしが出ても慌てないよう、以下のものを用意しておきましょう。
- 生理用ナプキンやおりものシート
- 外出の際は替えの下着を持ち歩く
- 母子手帳
- 入院するための日用品や書類
陣痛にはどんな種類がありますか?
子宮の筋肉が、赤ちゃんを腟口(ちつこう)に押し出そうとして起こる子宮の収縮が陣痛(じんつう)です。陣痛は、子宮内の赤ちゃんを産道に下降させ、外の世界に出てくるために必要なものです。
陣痛には、以下のような種類があります。
前駆陣痛
陣痛の予行演習のようなものです。妊娠中期に入るといつでも起こる可能性がありますが、まったく起こらないこともあります。前駆陣痛は子宮頸管の熟化を促しますが、実際に陣痛の間に起こる子宮頸管の拡張は起こりません。
偽陣痛
不規則に起こり、体勢を変えると治まります。ほかの偽陣痛の徴候を伴うことがあります。
分娩陣痛
出生前の数週間は、実際の出産に至るさまざまな徴候があらわれます。分娩陣痛には、以下のような徴候がみられます。 痛みが強くなり、体勢を変えても治まらない だんだん間隔が短くなって、痛みが強くなる その間隔は、はじめは短く弱く(約10~20秒)、次に長く(約10~20分程度),分娩の進行とともに次第に長くなり(約30~90秒)、最後は短く(約1~2 分)なります。 ピンクがかったり、血が混じったおしるし 腹痛、けいれん、下痢 破水(はすい)
陣痛の前に破水が起こるのは約15%で、ほとんどは分娩中に自然に起こるか、医師が羊膜を破って破水させます。
初期の分娩陣痛では、胃腸の不調、重い月経、けいれん、腹部圧迫のような痛みを感じます。下腹部だけに痛みを感じることもあれば、腰と下腹部の両方に感じることもあります。また、痛みが足の大腿部にまで広がることもあります。
偽陣痛でも同じ場所に痛みを感じることがあるため、痛みが起こった部位で分娩陣痛かどうかを判断できません。分娩陣痛かどうかは、痛みの間隔、強さ、規則性に注意することが重要です。
後産陣痛
出産後、陣痛の強さや周期は不規則になって一時的に軽くなりますが、胎盤や卵膜の娩出させるために産後の陣痛がやってきます。
後陣痛
後産陣痛後の陣痛です。胎盤剝離(はくり)面の血管を収縮させて止血し、子宮の回復を促すために起こります。出産後3 日までは、不規則で弱い陣痛があることが多いと言われています。
おわりに:粘液栓やおしるし、陣痛の出方には個人差がある。予定日が近づいたら、速やかに出産の準備を
粘液栓は出産の準備が整ったサインとして現われ、おしるしは出産の時期が近づいているサインとして表れます。ただし、どちらも色や状態には個人差がありますし、出ないこともあります。おしるしがこないからと油断して準備しておかないと、急に陣痛が始まったときに慌ててしまい、出産の準備もままならないままその日を迎える可能性もあります。粘液栓やおしるしがなくても、出産予定日が近づいたら陣痛にそなえておきましょう。