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妊娠高血圧症候群は赤ちゃんにもリスクが!?予防方法はある?

2021年4月27日

妊娠高血圧症候群とは

妊娠高血圧症候群は、妊娠前には現れず、妊娠中期以後になってから高血圧、蛋白尿、浮腫(むくみや1週間に500g以上の体重増加)の中の1つ、あるいは2つ以上の症状が現れるものです。

2005年4月以前には「妊娠中毒症」と呼ばれていました。妊婦や赤ちゃんに影響を与えることが多く、昔から産婦人科医師が診察のときに、注意を払ってきた妊娠中の異常です。

しかし、研究が進み、妊婦や赤ちゃんの障害に直接関係する異常は、「高血圧」が原因の中心であることがわかってきました。高血圧以外のむくみや蛋白尿ではそれほど問題がないことがわかったことで、高血圧が認められる場合に焦点を絞った病名である「妊娠高血圧症候群」が採用されました。

日本産科婦人科学会では、「妊娠高血圧症候群」を「妊娠20週以降、分娩後12週まで高血圧がみられる場合、または、高血圧に蛋白尿を伴う場合のいずれかで、かつこれらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものでないもの」と定義しています。

基準となる数値と診断基準

妊娠高血圧症候群の疑いがあると医師が判断した場合、正確に診断するために血液検査や尿検査をします。検査によって、尿にタンパク質が含まれていないか(タンパク尿)、肝臓中の酵素が極端に高くないか、血小板の数が少なくないかどうかを調べます。また、血液の凝固の度合いや、赤ちゃんが健康に育っているかどうかも調べます。

妊娠高血圧症候群の原因

妊娠高血圧症候群の原因ははっきりわかっていませんが、現在、有力と考えられている説についてお伝えします。

人間の胎盤は、妊娠すると母親の子宮に付いて、細胞がその壁の中に侵入します。そのとき、子宮側にある「らせん動脈(生理時の出血に関わる血管)」の壁をこわして、赤ちゃんの成長に必要な血液が十分に流れるように血管の壁のしくみを作り直します。

妊娠高血圧症候群は、この壁の作り直しがうまくいかないことが原因で起こっているのではないかと考えられています。

壁の作り直しがうまくいかないと、胎盤で赤ちゃんに酸素や栄養をうまく供給できなくなり、赤ちゃんがうまく育たなくなります。そのため、赤ちゃんの発育に必要な栄養や酸素をできるだけ多く流そうとすることで、母体の体は高血圧になってしまうと予想されているのです。

ただ、赤ちゃんの発育に問題のない妊娠高血圧症候群もありますし、赤ちゃんの発育が悪くても妊娠高血圧症候群にならない例もよくあります。妊娠高血圧症候群が起こるメカニズムについては、今後も研究が必要といえるでしょう。

妊娠高血圧症候群の治療について

入院は必要?

重症になると、入院して、血圧を下げる薬を服用したり、子癇(妊娠20週以降の初めての痙攣発作)を抑える点滴注射を行い、妊娠週数が早い場合には赤ちゃんの成長を待つこともあります。ただし、母親と赤ちゃんの状態によっては帝王切開で赤ちゃんを取り出し、治療を行う場合もあります。

どんな薬が使われる?

妊娠高血圧症候群の治療には、血圧を下げるための薬と、子癇発作を予防するためにマグネシウム剤が用いられます。しかし、これはあくまでも妊娠高血圧症候群の症状を軽減したり、重篤な合併症を予防するための治療です。妊娠高血圧症候群自体を治す薬はありません。

妊娠高血圧症候群の予防法

妊娠高血圧症候群予防はいろいろ行われていますが、現在のところ決定的な方法は見つかっていません。

たとえば、食べ過ぎたり塩分を取りすぎたりすると妊娠高血圧症候群になりやすくなることは知られていますが、逆に極端なカロリー制限や塩分摂取制限が危険なこともあります。

2006年に厚生労働省が制定した「健やか親子21」では、妊娠全期間を通してすすめられる体重の増加は、妊娠前の体重に応じて、やせている人(BMI 18.5未満)で9~12kg、普通の人(BMI 18.5以上25.0未満)で7~12kg、肥満の人(BMI25以上)では個別に対応するとされています。1997年制定の日本産婦人科学会の「妊娠高血圧症候群の生活指導および栄養指導」では発症予防として1日当たり10g以下の塩分制限をすすめています。

減塩のコツとおすすめレシピ

妊娠高血圧症候群の予防のためには普段から血圧が高くなる食事をひかえることが大切です。高血圧予防の食事のポイントは、塩分を減らすことと塩分の排出を促すカリウムなどのミネラル類を積極的に摂ることです。塩分を減らすのは、食事が味気なくなり物足りなさを感じる人もいるでしょうが、昆布や鰹節のだしを多く使ったり、減塩調味料を使うなど工夫することができます。
おすすめの減塩レシピをご紹介します。

① ハーブたっぷりの冷ややっこ

好きなハーブをたっぷりと刻み、豆腐に乗せ、オリーブオイルを適量かけ塩コショウで味付けをして出来上がり。
ハーブをたっぷり入れることでしっかりと味が付き塩分を抑えることができます。さっぱり味なのでつわりがつらい時期にもおすすめです。

② 野菜たっぷり豚汁

ゴボウやニンジンなどお好みの野菜と豚肉を適当な大きさに切り、ごま油でよく炒めます。火が通ったら、鰹節や昆布でしっかり取った出汁で煮込み、少量のみそを溶いて出来上がりです。
ポイントは出汁で煮る前にしっかり炒めて野菜と豚肉の甘みをしっかり出すことと、余分な塩分が含まれていない天然素材からとった出汁を使うことです。

赤ちゃんへの影響はある?

妊娠高血圧症候群で重症になると、子宮や胎盤へ送る血液が流れにくくなります。
胎児は、母親から胎盤を通して、血液中の酸素や栄養をもらっているので、血液が流れにくくなると、栄養不足、酸素不足になってしまいます。

栄養が足りなくなると赤ちゃんは十分に育たなくなり(胎児発育不全)、平均よりも低体重の赤ちゃんが生まれたり(低出生体重児)します。母親からもらう酸素が足りなくなると低酸素症になり、長く続くと脳にも影響がでることがあります。最悪の場合、胎児が亡くなる(子宮内胎児死亡)こともあります。

母親の子宮が収縮すると、子宮から胎盤に向かう血液の流れが悪くなります。赤ちゃんが酸素不足に陥り、胎児の心拍に異常が起こる状態(胎児機能不全)が起こりやすくなります。その場合は、できるだけ早く、帝王切開などで胎児を取り出さねばなりません。

おわりに:原因や予防法がわかっていないからこそ、定期的な妊婦健診でのチェックが大切

妊娠高血圧症候群は、はっきりした原因や予防法はわかっていませんが、現在のところ1日当たり10g以下の塩分制限が推奨されています。また、定期的に妊婦検診を受けることも重要です。自分自身と赤ちゃんのためにも健康状態を常に確認するように心がけましょう。

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