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妊娠中に細菌性腟症に!赤ちゃんへの影響は?薬で治しても大丈夫?
2019年9月28日
妊娠中は細菌性腟症になりやすい?
細菌性腟症とは、何らかの原因によって腟内の常在菌のバランスが崩れ、腟内に炎症やおりものの変化、性交痛が起こる病気です。
健康な腟内では弱酸性の状態が保たれ、菌の繁殖を抑えているのですが、とくに妊娠中は免疫力が低下しやすく、自浄作用が正常に働くなってしまうことによって細菌性腟症を引き起こします。
妊娠の有無に関わらず、常在菌のバランスによって引き起こされるため、女性なら誰にでも起こりうるものです。
妊娠中に細菌性腟症になると、お腹の赤ちゃんに影響する?
細菌性腟症になると、お腹の赤ちゃんへの影響が心配されます。
発見や治療が遅れると、炎症が赤ちゃんを包んでいる絨毛膜や羊膜にまで達し、絨毛膜羊膜炎を発症するリスクが高まります。
絨毛膜羊膜炎は、早産や前期破水の原因となり、新生児に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、満期に発症した場合でも母体の敗血症や新生児感染の原因となることもあり、すぐに経腟分娩できない場合は緊急帝王切開が必要となります。
菌血症や脳性麻痺といった重篤な病気につながる可能性もあるため、妊娠中に気になる症状があればすぐに医療機関を受診しましょう。
細菌性腟症の症状ってどんな感じ?
細菌性腟症は腟内の常在菌のバランスが崩れることで起こります。
腟の中にはさまざまな菌が存在していますが、その75~95%はデーデルライン桿菌 と呼ばれる菌です。
これは腟内を弱酸性に保ち、悪さをする菌の侵入を防いでいるのですが、特に免疫力の低下する妊娠中や腟を洗いすぎたりすると乳酸桿菌の働きが弱まり、常在している悪さをする複数の菌が繁殖し始め、腟内のバランスが崩れることで細菌性腟症が起こります。
自覚症状としてよく見られるのがおりものの異常です。
腟内の自浄作用が働いておりものの量が増え、白やクリーム色の正常なオリモノの状態から灰色になります。また、健康なときのおりもののにおいは少し酸っぱいにおいですが、細菌性腟症を発症するといつもより生臭く、魚が腐ったようなにおいになります。
腟の内部や腟口の周囲が赤くなったりかゆくなったりすることもありますが、かゆみはそれほどひどくありません。
ただ、まれに不正出血や腹部痛や排尿痛を感じる人もいます。
いずれにしても、上記のような症状は体になんらかの異常が起こっている可能性があります。
早めに医療機関を受診して検査してもらいましょう。
妊娠中に細菌性腟症になったときの治療法は?
細菌性腟症の治療は、基本的に腟錠と呼ばれる抗生物質、もしくは抗原虫薬を直接腟内に挿入しておこないます。
抗生物質で使われるのがクロラムフェニコールと呼ばれるもので、この薬は悪さをする細菌だけでなく腟内のバランスを保つ乳酸桿菌も取り除いてしまうため、再発しやすくなるといったデメリットがあります。
そのため最近ではメトロニダゾール腟錠とよばれる、細菌を取り除きながら乳酸桿菌を保護する腟錠を使用するのが一般的です。
妊娠12週未満ではメトロニダゾールの内服は禁忌とされており、腟錠による治療を行います。
この時期は医療機関で腟内を洗浄した後、メトロニダゾール腟錠を1錠挿入し、翌日以降は、1日1回1錠を清潔にした手で5日間継続して腟のなかに挿入します。
12週以降では、医療機関で腟内洗浄後、メトロニダゾール腟錠を1錠挿入し、この日から1回1錠を朝と夜の1日2回、または朝、昼、夜の1日3回、5日間継続して内服します。
細菌性腟症は一度かかると再発しやすいため、日ごろから規則正しい生活や十分な睡眠を心がけ、免疫力を高める体作りも大切です。
おわりに:赤ちゃんへの影響を防ぐために早めの治療を
細菌性腟症は一般的な性感染症と違って、パートナーが同様の症状を訴えることはありません。
ただし、治療が遅れると赤ちゃんに影響を与え、早産や前期破水、新生児が母子感染すると肺炎や髄膜にかかる可能性があります。
抵抗力の低下している妊娠中はオリモノの異常に注意し、気になることがあったら医療機関を受診して早めに治療をおこないましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。