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漢方で冷え症を改善したいとき、どんな薬を服用するの?
2023年10月11日
冷え症とは
冷え症とは、体感的に寒さを感じないくらいの気温であっても、全身や手足、下半身など体の一部あるいは全部が冷えてつらい症状のことです。冷え症の主な原因は「血行不良」と考えられています。血行不良が起こる理由として、自律神経・心臓・筋肉などの働きが関係しているのではないかと言われています。
冷え症は特に女性に多いとされますが、それは月経の影響などにより、血が少なくなって全身に熱を運べなくなったり、腹部の血流が滞りやすくなったりすることが原因と考えられています。一方、男性に冷え症が起こる場合、運動不足による筋肉の減少やストレス、生活習慣病による動脈硬化などで血流が悪くなっていることが多いと考えられています。冷え症からくるそのほかの症状として、「肌荒れ・腰痛・頭痛・皮膚疾患・下痢・便秘・膀胱炎」などが挙げられます。
一口に冷え症と言っても冷える部位によって少しずつタイプが異なります。具体的には、以下の4つのタイプに分けられます。
- 手足だけが冷えるタイプ
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- 食が細く、痩せているタイプの女性に多い
- 体を温める食事を心がけ、日頃から軽い運動を習慣づけると改善する
- のぼせがあり、手足・下半身が冷えるタイプ
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- 更年期の症状のひとつともされる「冷えのぼせ」が大きな特徴
- 自律神経の乱れから起こりやすいとされる
- ストレスを解消し、リラックスできる時間を作ると改善する
- お腹が冷えるタイプ
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- 内臓が冷えてしまうため、月経不順や月経痛などの症状につながりやすい
- 温かいものを飲むと改善することがある
- 全身が冷えるタイプ
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- エネルギーを作り出す力と、エネルギーの材料となる飲食物を消化する力の両方が滞っていると考えられる
- 食事量の少ない人や、過度なダイエットを行っている人に多い
- タンパク質をしっかり摂取し、バランスの良い食事を心がけるとともに、運動不足を改善するとよい
冷え症の改善につながる漢方薬は?
漢方医学には「気・血・水(き・けつ・すい)」という概念があり、冷え症はこれらに何らかの異常が起こって生じると考えられています。具体的には、「血虚(けっきょ:血が足りない状態)」「瘀血(おけつ:血が滞っている状態)」「水毒(すいどく:水分が異常に溜まっている状態)」「気虚(ききょ:気が不足している状態)」などがあり、さらにはいくつかの状態が重なって冷え症となっている場合もあります。
- 血虚
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- 血は血液のことを指す
- 女性は月経があるため、血虚になりやすい
- 血の働きも弱く、貧血傾向やめまい、しびれ、けいれんなどの症状も現れやすい
- 瘀血
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- 血液の流れや働きに障害が起こり、熱が運ばれにくくなっている
- 便秘気味で月経痛や肩こり、肌荒れなどを伴う
- 水毒
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- 体の水分量が多かったり、偏ったりして、水分の多い部分に冷えが起こる
- 頭痛・頭重感・むくみ・耳鳴り・頻尿などを伴う
- 気虚
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- エネルギー不足によって、熱が生まれにくくなっている
- 疲れやすく風邪を引きやすい、寒がりなどの症状が出ることもある
このほか、それぞれ個人の体質や状態などを考慮して、その人に合った漢方薬を処方することになります。代表的な漢方薬は以下の通りです。
- 血虚
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- 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
- 人参養栄湯(にんじんようえいとう)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 瘀血
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- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
- 温経湯(うんけいとう)
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 水毒
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- 苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 気虚
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- 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
- 人参養栄湯(にんじんようえいとう)
- 八味地黄丸(はちみじおうがん)
このほか、最近働く女性に増えているとされるのが「ストレスによる冷え」です。ストレスを改善するためには、以下のような漢方薬がよく使われます。
- 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
- 香蘇散(こうそさん)
- 抑肝散(よくかんさん)
- 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
- 四逆散(しぎゃくさん)
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
- 桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
いずれの場合も、個人の体質や状態も加味しながら、その人に合った漢方を処方してもらいます。漢方の診察では、独自の「四診」と呼ばれる方法がとられ、月経の状態や日常生活のことなど、冷え症とはあまり関係のなさそうなことを問診で尋ねられたり、お腹・舌・脈などを診たりすることがありますが、いずれも症状に合った漢方薬を出す上で必要なことです。
生活習慣の見直しも大切
冷え症を改善するためには、前述のような「気・血・水」がバランスよく巡るようにしなくてはなりません。そのためには漢方薬を飲むのと同時に生活習慣も改善すると、より早く効果的に冷え症を改善することができます。以下にご紹介する食事・衣服・運動・入浴の4つのポイントをおさえましょう。
- 食事
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- 冷たいものをなるべく避け、体を温める作用のある食材を摂取する
- 良質のタンパク質である羊肉は「気」を補ったり、「血」を増やしたりしてくれる
- 魚介類では、体を温める効果が高いとされるエビがおすすめ
- サフランや生姜も体を温める食材として広く使われている
- お酒は飲みすぎると血管が拡張し、皮膚から熱が放出されて体温が下がってしまうため、適量を心がける
- 衣服
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- 血流が滞ると冷えにつながるため、体を締め付ける服や下着を避ける
- 膝から下の全体を締めつけるタイプのブーツは、足の血流を滞らせることがある
- 靴下やレッグウォーマーを履き、スカートの下に厚手のタイツを重ねるなどして、下半身の保温を心がける
- 保温や汗が冷えにくい、機能性があるインナーを上手に利用する
- 運動
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- 筋肉量が少ないと、体の熱を多く作れない「気虚」の状態になりやすい
- 運動を生活の中に積極的に取り入れ、筋肉を鍛えて冷えない体作りを
- ウォーキング・ストレッチ・ヨガなどは冷えのみならず健康に役立つ
- 体を動かせば、より質の高い睡眠を取りやすくなる
- 入浴
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- 血行を促進し、体を温めるのに効果的(入浴時、足のストレッチやマッサージもするとより良い)
- 入浴が長時間続くとのぼせてしまうため、長湯にならないよう気をつける
- 風呂場の脱衣所が意外と冷えやすいため、小さな暖房器具などを置いておくとよい
日常生活の中で、冷え性を改善できるポイントはたくさんあります。もし、冷え症の人で上記のポイントを改善できる余地があれば、できることから少しずつ実践していきましょう。たとえば、血行を良くして体を温めるために、定期的な運動とその後の入浴を習慣化するだけでも、少しずつ体質は変化してきます。
おわりに:漢方で冷え症を治すために、血虚・気虚・瘀血・水毒を改善しましょう
冷え症とは、体感的に寒いと感じるほどの気温でなくても体の一部または全身が冷えてしまう症状のことです。漢方医学で冷え症は主に「血虚・気虚・瘀血・水毒」のいずれかと考えられ、それぞれの状態と体質を考慮した漢方薬が処方されます。
漢方薬以外にも、生活習慣を改善することで冷え症をより効果的に改善できます。体を温める食事や、血行を良くする運動や入浴、体を締めつけにくい衣類などを心がけましょう。