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自然妊娠から不妊治療へ移行するタイミングは?病院選びのコツは?

2022年2月2日

自然妊娠ってどんなふうに進むの?

不妊治療を考える前に、まずは自然妊娠の場合、どんな仕組みで妊娠が起こるのかを確認しましょう。

自然妊娠は、大きく分けて3つの段階に分けることができます。

① 排卵
卵巣から卵子が排出される
② 受精
卵子と精子が出会う
③ 着床
子宮の壁に着床し、妊娠成立となる

妊娠の過程は、排卵→受精→着床の順で起こります。このどれが欠けても妊娠は成立しません。それでは、それぞれの過程について詳しく見ていきましょう。

排卵とは?

卵子が精子と受精するためには、受精可能な状態まで成熟しなくてはなりません。思春期以降の女性では、この卵成熟と排卵が月に1度起こり、卵子が受精せず妊娠も起こらないと月経が起こります。

毎月、卵子が成熟するためには、脳の下垂体という部位から分泌されるホルモンが必要です。FSHというこのホルモンは卵胞を育てる働きがあり、数個の卵子をいっぺんに育てます。そして、ホルモンに対してよく反応し、一番大きくなった卵胞の中にある卵子だけが排卵されます。残りの卵子は排卵されず、卵胞は自然としぼんでいき、体内で吸収され消滅します。

こうして、選ばれた一つの卵子が卵胞を飛び出し、卵巣の外に出ます。卵巣を飛び出した卵子はすぐに卵管采という器官にキャッチされ、卵管の中に入り、卵管膨大部という部分で精子の到着を待ちます。排卵は、月経周期が28日の人の場合およそ14日目に起こり、卵子は排卵されてから約24時間だけ生存、すなわち受精可能な状態となっています

受精とは?

排卵が起こってから24時間以内に卵子が精子と出会えると、受精となります。精子の女性体内での生存期間は約72時間といわれており、精子の方が寿命が長いです。ですから、受精のタイミングを合わせるタイミング法などを行う場合は排卵日よりも前に精子を女性の体内に送り込んでおき、卵子が排卵されるのを待つ必要があるのです。

また、女性の子宮の入り口や腟内は通常の状態では酸性に保たれており、精子が侵入できなくなっています。これは主に殺菌作用のためですが、この酸性の環境は精子にとっては非常にダメージの高いものです。

そこで、排卵日が近づくと頸管粘液という液が分泌されます。頸管粘液はアルカリ性で、腟内、あるいは子宮の入り口の酸性を中和し、精子を通りやすくします。こうして、排卵日近くに腟内に射精された精子は、子宮内を泳いで上っていき、卵子の待つ卵管膨大部まで辿り着くことができるのです。

着床とは?

さて、卵管膨大部で受精した受精卵は、まず胎児の育つ場所である子宮まで辿り着かなくてはなりません。そこで、2細胞、4細胞、8細胞と細胞分裂を繰り返しながら、徐々に卵管から子宮へと移動していきます。この間、子宮の方では受精卵が着床しやすいよう、子宮内膜という子宮の壁にあたる部分が分厚くなります。

よく「赤ちゃんのベッド」などと表現される子宮内膜に受精卵が辿り着くのは、受精後およそ5日〜7日のことです。受精卵は子宮の壁を転がりながら子宮内膜に潜り込みます。この現象が着床と呼ばれ、妊娠の最も初めの状態です。

自然妊娠が成功する確率ってどのくらいなの?

自然妊娠できるかどうかは、女性の年齢によるところが大きいです。一般的に、女性の年齢が30歳を超えると自然妊娠の確率は緩やかに低下し始め、35歳を超えると大きく低下します。

  • 20〜30歳…25〜30%
  • 35歳…18%
  • 40歳…5%
  • 45歳…1%

20〜30歳ごろは、妊娠適齢期と考えられており、自然妊娠の確率が最も高い時期です。しかし、逆に考えれば自然妊娠の確率は最大でも3割程度です。ですから、男女ともに不妊原因がない夫婦が避妊をやめ、「妊活」を始めたとしても、すぐに妊娠できるとは限らないのです。

自然妊娠するまでの期間は?

健康な男女がタイミング法などを利用し、積極的に妊娠を希望した場合、自然妊娠するまでの期間はだいたい以下のようになります。

  • 45%が3ヶ月以内に妊娠
  • 65%が6ヶ月以内に妊娠
  • 85%が12ヶ月以内に妊娠

このことから、WHO(世界保健機構)を始め、さまざまな機関が不妊症の定義を1年と定めています。1年経っても妊娠しない場合、何らかの不妊原因があると考えられるのです。これについては、後ほど詳しく説明します。

妊娠した後に流産する確率はどのくらい?

着床すれば、必ず生産に結びつくとは限りません。自然妊娠の場合でも、体外受精の場合でも、一定の確率で流産することがあります。流産の起こる原因ははっきりとはわかっていませんが、受精卵の染色体異常が主であると考えられています。各年代での自然妊娠の流産率は以下のとおりです。

  • 34歳未満…約15%
  • 35〜39歳…約17〜18%
  • 40歳以上…約25〜30%

年齢が上がるにつれて、流産の確率も上がります。この理由もはっきりとはわかっていませんが、年齢を重ねるにつれて女性の体内に存在する卵子のストックに染色体異常が増えてくること、また、そのパートナーである男性も年齢を重ねることで、作られる精子に染色体の異常を持つものが増えてくることの双方が原因ではないかと考えられています。

この場合の染色体異常とは、産まれてくる子供が奇形になることではありません。そして、母親や父親の遺伝子が正常であっても、卵子や精子の染色体異常は現れます。染色体異常の卵子・精子とは、受精できないか、運良く受精できたとしても育つことができず、途中で流産してしまう生殖細胞のことなのです。

また、自然妊娠よりも体外受精の方がやや流産率が高いというデータがあります。

  • 自然妊娠…15%
  • 体外受精…20〜25%

これだけを見ると、体外受精の方が流産率が高いように見えますが、そもそも体外受精を選択する人の方が年齢層が高く、かつ既に何らかの不妊原因がある人を扱っているので、このような結果が出るという一面もあります。

自然妊娠から不妊治療を始めるタイミングは?

日本産婦人科学会では、不妊症の定義を「生殖年齢にある男女が1年間、避妊することなく性生活を行なっているにも関わらず、妊娠の成立を見ない状態」と定めています。先ほどもお話ししたように、1年間という期間は、自然妊娠を希望する男女の8割が1年以内に妊娠成立していることによるものです。

この期間はWHOだけでなく、アメリカの生殖医学会でも1年間と定義されています。また、日本よりも治療年齢が高い人が多いアメリカでは、「女性の年齢が35歳以上の場合、6ヶ月経過後には検査開始を認める」ということも明文化されています。

このことから、1年以上積極的に性生活を行なっているにも関わらず、妊娠が成立しない場合、何らかの不妊原因があると考えるのが妥当です。また、不妊と判断する期間は、年齢が高くなるにつれて短くなっていきます。これは、年齢が高い場合は時間経過でどんどん妊娠率が下がっていくため、より早期に検査と治療を開始した方が妊娠に結びつきやすいからです。

夫婦の年齢によって不妊治療を始める時期が変わる?

夫婦の年齢と不妊治療に対する一般的な目安は、以下のとおりです。

夫婦ともに20代から30代前半の場合
妊娠適齢期真っ最中です。まずは1年間、自然妊娠を試みましょう
タイミング法などを用いて、1年以内に85%が妊娠できます
月経不順やつらい月経痛、性交痛などがある場合は病院へ
女性の年齢が35歳以上の場合
質のいい卵子のストックが減ってきますので、妊娠率が低下し始めます
1年を待たずに、半年ほど経過したら検査に行くのが良いでしょう
女性の年齢が40歳以上の場合
妊娠適齢期とは言えませんので、妊娠・出産は個人差が大きくなります
妊娠を希望された時点で不妊治療を扱うクリニックを受診しましょう

夫婦ともに20代〜30代前半の場合は、まず1年間ほど自然妊娠を試みるのが良いでしょう。もちろん、タイミング法を指導してもらうために病院に行くのも一つの手です。また、もし月経痛や性交痛など、妊娠に関することで不調がある場合は、婦人科系の疾患の可能性があります。早めに医師に相談しましょう。

女性の年齢が35歳になると、妊娠率が低下してきますので、1年を待たず半年程度経ったら医師に相談してみましょう。早めに治療を開始すれば、結果が得られる可能性も高くなります。

女性の年齢が40歳になると、妊娠率はかなり低くなります。自然妊娠での妊娠率は先ほど載せたとおり、1%と非常に低くなります。「自分は大丈夫」と自然任せにせず、妊娠を希望された時点で医師に相談しましょう。

不妊治療の病院選び、ポイントは?

それでは、不妊治療を始めるにあたり、どのような基準で病院を選べば良いのでしょうか?主に検討される4つのポイントについて、詳しく見ていきましょう。

婦人科と不妊科、どっちがいいの?

女性の年齢が20代程度と若く、避妊期間も短い場合、まず婦人科で検査のみ行っても構いません。また、タイミング法などの「一般不妊治療」と呼ばれる体外受精を行わない不妊治療であれば、不妊専門でなくとも治療を行っている婦人科もあります。

しかし、女性の年齢が30歳を超えている場合は初めから不妊科に行くのが良いでしょう。30代前半はまだ妊娠適齢期ですが、ゆるやかに妊娠率の低下が始まっていることに加え、数年後には不妊治療を開始する可能性があります。希望があれば、または検査で不妊要因が見つかればすぐに不妊治療に切り替えられる病院に行くのがおすすめです。

また、女性の年齢が35歳〜40代の場合は初めから不妊治療を視野に入れて病院を選びましょう。各種の検査をしながら並行して治療を進めることができ、効率的に妊娠に繋がりやすい提案や処置をしてもらえます。

大病院と個人クリニック、どっちがいいの?

総合病院や大きいクリニックなどで、医師が複数いる場合は診察の度に医師が変わる可能性があります。担当医制を採っているところでは主治医を決めてかかることもありますが、病院ごとに違います。

対して、個人経営のクリニックなどで医師が1名しかいない場合は、検査から治療終了までずっと同じ医師にかかることになります。

どちらの方が良いかは個人の好みですが、担当医がずっと変わらない方が良い方は担当医制の病院か個人経営のクリニックなど、逆に医師が変わっても構わないという方、何人かの医師に意見を聞きたいという方は複数の医師が担当するクリニックや大病院が良いでしょう

通院しやすいところにしよう

体外受精を行う場合、卵胞の成長具合を数日おきに確認したり、排卵誘発の注射を打つために連日病院に通う必要が出てきます。また、タイミング法や人工授精であっても、卵胞が育ちにくかったり、育ち方が不規則な場合にはやはり頻繁にチェックする必要があります。

そこで、病院の立地も重要な条件です。自宅か職場のどちらかに近い、または途中で必ず通る場所にあるなど、通いやすさも考慮して選びましょう。

病院までの交通機関、または自家用車を使う場合は駐車場のあるなし、コインパーキングの費用など、交通費も合わせてシミュレーションしておきましょう

病院の決め手は「相性」で選ぼう

不妊治療は、一般的なケガや病気の治療とは違い、非常にデリケートでメンタル的な部分の影響が強い治療です。つまり、悪いところを摘出、または治療して終わりではなく、夫婦の望む形での治療をすることがとても大切なのです。

そのためには、治療を行う病院、または医師との相性が非常に重要です。病院、または医師との相性を見るには、以下のような方法があります。

  • 本や雑誌、インターネットで評判を調べたり、病院のホームページを見る
  • 勉強会・講習会に行く
  • 一度実際に診察を受ける

最終的には、夫婦のどちらも納得できる治療を行えることが大切です。悔いのない治療をするために、病院選びは慎重に行いましょう。

本や雑誌、インターネットを活用して情報を集めよう

本や雑誌の不妊治療特集などは、情報がまとまって載っているため非常に見やすいという利点があります。ホームページやインターネットの口コミサイトなどは、スマホやPCさえあれば手軽に検索できる利点があります。

気をつけなくてはならないのは、治療成績の項目です。着床率、妊娠率や出産率は独自の算出方法を採っている病院が多く、統一の基準がありません。そのため、中には日本産婦人科学会などの総合データよりも突出して高い成績が出ている病院もあります。治療成績はあくまで参考程度と考えるのが良いでしょう。

勉強会や講習会に行って雰囲気を掴もう

多くの病院が、これから不妊治療に臨む方に向けての勉強会や講習会を行っています。医師が行っているところもありますが、体外受精を扱う専門職である胚培養士が行っているところもあります。

病院の雰囲気を掴んだり、気になることがあれば質問をすることもできます。夫婦で納得のいく治療をするために、できるだけ2人でスケジュールを合わせ、何件か行ってみると良いでしょう。

実際に診察を受け、医師と話してみよう

本やインターネット、勉強会などで情報を得て病院を絞り込めたら、実際に一度病院に行ってみましょう。やはり最後は会話してみて、この人に治療を任せられるという信頼感を得られるかどうかが大切です。

もし、そこであまりにもイメージと違ったり、どうしても納得できないと思ったら、別の病院に行ってみましょう。

おわりに:不妊治療へのステップアップは1年が目安

不妊治療へのステップアップは、避妊をやめて継続的に性生活を行うようになってから約1年程度が目安です。しかし、女性の年齢が35歳を超えていれば、1年を待たずとも早めに医師に相談しましょう。

病院は、通いやすさと相性の両面から選ぶと良いでしょう。特に、体外受精となった時には頻繁に病院に通う必要があります。通い続けることがストレスにならないよう、通い始める前によく検討しましょう。

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