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花粉症でつらいときに使われる漢方薬について

2024年4月3日

花粉症治療における漢方医学の考え方とは?

花粉症とは、花粉をアレルゲン(抗原=アレルギーを引き起こす原因物質)として起こるアレルギー反応のことです。免疫細胞のひとつである「リンパ球」は、大きく「Th1リンパ球」と「Th2リンパ球」に分かれていて、それぞれ以下のように役割が異なります。

Th1リンパ球

主にウイルスや細菌などの病原体に対して働く

Th2リンパ球

食物や花粉などの異物に対して働く

このうち、花粉症のアレルギー反応を引き起こす免疫とは「Th2リンパ球」です。これらのリンパ球の多さ少なさはシーソーのようになっていて、Th1が多いとTh2が少なく、Th2が多いとTh1は少なくなることが明らかになっています。そのため、花粉症などのアレルギー反応が起こるときは、Th2が増えて両者のバランスが崩れます。バランスが崩れる原因はまだ解明できていませんが、ストレス・食生活の乱れなど、ライフスタイルが影響しているのではないかと考えられています。

以上のような西洋医学の考え方に対して、漢方医学では「症状そのものを抑える治療と、病気になりやすい体質を改善する治療」の両方からアプローチしていきます。花粉症の場合、鼻水・鼻づまり・くしゃみなどの症状を抑える治療と、アレルギー体質を改善する治療の両方からアプローチしていきます。

花粉症ではどんな漢方薬が処方される?

漢方医学では「症状そのものを抑える治療と、病気になりやすい体質を改善する治療」の両方からアプローチします。花粉症の場合、その症状は漢方医学で「体内の水分バランスの異常(水毒)」という状態と考えられます

水毒とは、必要なところには水分が少なく、特定のある部分に水がたくさん溜まってしまっている状態(水の偏在)のことです。たとえば、鼻水や涙目は本来不必要な部分に水が多く溜まってしまっているために起こる症状で、鼻づまりは鼻の粘膜に水分が溜まって腫れてしまったと考えます。花粉症の時期にはなんとなくむくんでしまうという人もいますが、これも水毒の症状のひとつと考えられます。

そこで、漢方薬の花粉症の治療では、水分の偏在を解消して体内の水分バランスを整える「利水剤」を使います。おもに使われるのは「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」です。体力中等度またはやや虚弱の人、薄い水のような痰を伴うせきや鼻水が出るタイプのアレルギー性鼻炎や花粉症に使われます。

そのほか、「麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)」も、体力虚弱で手足に冷えがあるタイプのアレルギー性鼻炎に対して使われますが、小青竜湯の治療効果は臨床試験でも鼻水・鼻づまりに対して効果があると判明しているため、花粉症の漢方薬では主に小青竜湯が使われています。

小青竜湯について

体の「水(すい)」をうまく排泄できないと、体内に余分な水が溜まりやすくなってしまい、さまざまな不調を引き起こします。この水が鼻から溢れ出たものが鼻水で、水が気の流れを妨げてしまうことから、気を動かそうとしてくしゃみが出る、と漢方医学では考えられています。小青竜湯とは、「水(すい)」によって冷えた部分を温めながら水分代謝を促すとともに、「気」を動かし、鼻水・くしゃみなどの症状を抑える漢方薬です。眠くなる成分は含まれていませんので、仕事や学校があって強い眠気が出るのは困る、という人でも飲むことができます。

小青竜湯は花粉症のほか、気管支炎や気管支喘息、アレルギー性鼻炎、むくみや感冒(いわゆる風邪)などに対しても使われることがあります。症状としては、薄い水のような痰を伴う咳や鼻水が出ている人、体力は中等度かまたはやや虚弱な人に対して使われます。

小青竜湯を服用するときの注意点は?

小青竜湯は、生後3カ月未満の赤ちゃんには使えません妊娠している方、妊娠の可能性がある方も使えませんので注意してください。また、以下のいずれかに当てはまる人は、服用の前に必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

  • 医師の治療を受けている
  • 妊娠している、あるいはその可能性がある
  • 体力が衰えている、体が弱い(虚弱体質)
  • 胃腸が弱い
  • 著しく汗をかきやすい
  • 高齢者
  • 今までに薬などで発疹や発赤、かゆみなどのアレルギー反応を起こしたことがある
  • むくみや排尿困難などの症状がある
  • 高血圧、心臓病、腎臓病、甲状腺機能障害のいずれかの診断を受けている

もし服用後に「発赤・発疹・かゆみ」「吐き気・食欲不振・胃部不快感」などが現れた場合、副作用の可能性がありますので、すぐに医師や薬剤師に相談しましょう。また、まれに以下のような重篤な副作用が起こることもあります。この場合はすぐに病院で医師の診察を受けましょう。

間質性肺炎

  • 階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがしたり、息苦しくなる
  • 空咳や発熱などが見られ、これらの症状が急に現れたり、続いたりする

偽アルドステロン症、ミオパチー

  • 手足のだるさ・しびれ・つっぱり感・こわばりなどに加えて脱力感や筋肉痛が現れ、さらにそれが徐々に強くなる

肝機能障害

  • 発熱・かゆみ・発疹・黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)・尿が褐色になる・全身のだるさ・食欲不振など

小青竜湯を1カ月ほど(風邪の場合は5〜6日間)服用しても症状が良くならない場合、服用を中止して医師や薬剤師に相談しましょう。また、長期にわたって飲み続ける場合も専門家への相談が必要です。とくに、花粉症の時期は数か月間飲み続けることもありますので、飲み始める前に一度医師に相談してみるのも一案です。

おわりに:花粉症の治療には主に「小青竜湯」という漢方薬が使われます

花粉症は、西洋医学ではアレルゲン(花粉)に対するアレルギー反応だと解明されていますが、漢方医学では水毒という体内の水分バランスの異常だと考えられています。これは、必要なところに水分が少なく、不要なところに水分が溜まってしまっている状態です。そこで、花粉症の治療には、水分の偏在を解消して体内の水分バランスを整える「利水剤」であり、臨床試験でも効果が確認された「小青竜湯」がおもに使われています。小青竜湯には、副作用や使用上の注意点もありますので、使用するときは必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

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