子育て
お正月、お餅が喉に詰まってしまったときの対処法は?
2023年12月20日
お餅による窒息、「1月」「65歳以上」が特にキケン!
毎年お正月になると、お餅による窒息事故のニュースが報じられますが、実際お餅などで窒息して救急搬送される人数が最も多いのは毎年「1月」です。
東京消防庁の調べによれば、過去5年間(平成25~29年)の月別の救急搬送人数(東京都内)を比較した結果、最も多いのは1月で199人、12月で69人、2月で47人と、群を抜いて1月が多かったそうです。これにはお雑煮や磯辺焼きなど、お正月シーズンならではのお餅料理が関連していると考えられます。
また、東京都では過去5年間のうち、521人もの人がお餅や団子を喉に詰まらせて緊急搬送されたのですが、うち90%を占めるのが65歳以上の人です。これは加齢によって舌や喉の筋力、咳込む反応が弱まり、嚥下機能(ものを飲み込む力)が衰えたことが原因で、高齢者であればあるほど嚥下機能は弱っています。
お餅が詰まった人の半数以上に死亡リスクが!
お餅のさらに恐ろしい点が、死亡リスクが高いということです。平成29年度、お餅による窒息事故で病院に運ばれた人の約70%は中等度(生命の危険はないが、入院を要する)以上の状態でした。
さらに、うち8.5%は重症(生命の危機が強い)、39.4%は重篤(生命の危機が切迫している)、12.8%は初診時に死亡が確認されたそうです。つまり、お餅が喉に詰まってしまった時点で、死亡リスクはかなり高いということになります。
お餅が喉に詰まってしまったら、どう対処すればいいの?
お餅が喉に詰まるリスクが特に高いのは65歳以上の人ですが、中年世代や若い人、子供でも同じリスクはあります。死亡リスクが高く一刻を争う事態なので、冷静に適切な対処ができるようにしておきましょう。
①「チョークサイン」があれば、すぐに救急車を
チョークサインとは、自分の喉を親指と人差し指で掴むという、窒息を起こしているサインです。このほかにも声が出ていない、顔色が真っ青になったなど、窒息が疑われる場合はすぐに119番通報をしてください。
②反応があれば「ハイムリック法」or「背部叩打法」を
喉に詰まった直後、呼びかけたときに反応があれば、できる限り咳込むように伝えてください。そして下記の「ハイムリック法」を、ハイムリック法で効果が出なければ「背部叩打法(はいぶこうだほう)」を実施してください。
ハイムリック法
※「反応がない場合」「乳児や新生児、1歳未満の子供」「妊婦」には、絶対に実施しないでください。
- 患者さんに落ち着くよう伝える
- 患者さんを立った状態か座った状態にさせ、救助者は背後に回りこむ
- 片方の手で握りこぶしを作り、親指と人差し指の輪で作った面を、患者さんのおへそのやや上方(みぞおちの下あたり)に当てる
- もう片方の手で、握りこぶしを上から包むようにして握る
- この両手を使い、手前上方に一気に引くようなイメージでみぞおちを上へ突き上げる
- 異物が取れるまで数回繰り返す
背部叩打法
ハイムリック法の実施が難しい、あるいは効果が出ない場合に実施してみてください。1歳未満の子供や妊婦にも実施可能な方法です。
- 患者さんが座っているor立っている場合は、片手を使い、やや後方から患者さんの胸から下顎を支え、顎を反らせる。倒れている場合は手前に引き起こして横向きにさせ、自分の足で患者さんの胸を支え、片手で下顎を反らせる
- もう片側の手のひらの付け根を使い、患者さんの肩甲骨と肩甲骨の間を強く、素早く叩く
- 異物が取れるまで数回繰り返す
③意識がなければ「心肺蘇生」を
呼びかけても反応がないようなら、救急車が到着するまでの間にAEDを取りに行き、心肺蘇生を開始してください。心肺蘇生のやり方については、日本医師会のページを参考にしてください。
こんな対処法はNG!
まず、お餅などの異物を探すために、口の中に指を突っ込むのはやめてください。患者さんの意識があるときにやると噛まれてケガをしたり、または異物をさらに奥に押し込んでしまう恐れがあります(異物がしっかり見えており、容易に取り出せそうであれば、除去してもかまいません)。
また、掃除機のノズルを口に突っ込んでお餅を吸引するのは、衛生的に汚いので最後の手段にしてください。さらに、ノズルを喉まで入れてから電源をオンにしないと、誤って舌を吸引してしまうことになります。
【 公益社団法人 鹿児島県医師会 の情報をもとに編集して作成 】
おわりに:お餅による窒息事故は重症例が多い。未然の対策を
毎年後を絶たない、お餅による窒息事故。ニュースで見る分には他人事のように思ってしまいますが、特に65歳以上の人がいるご家庭では、いつ起きてもおかしくない事故でもあります。
窒息の時間によっては脳死、死亡してしまうことも少なくないので、対処法を知っておくことはもちろん、「お餅はなるべく小さく切っておく」「噛み砕き、唾液と混ぜてから飲み込むようにする」「横になった状態で食べない」といったできる対策をしっかり取るようにしましょう。