子育て
災害時、エコノミークラス症候群の発症者が増えるのはなぜ?
2023年8月2日
熊本地震や北海道地震で、エコノミークラス症候群の死亡者・発症者が増えた理由は?
「災害関連死」という言葉をご存知でしょうか。火災や水難、土砂崩れ、建物の倒壊といった災害による直接的な死ではなく、避難中の環境、疲労などが原因で病気にかかったり、持病が悪化したりしたことによる死という意味です(地震の場合は「震災関連死」という言い方をする場合もあります)。
そしてこの災害関連死の原因のひとつとして問題になっているのが、「エコノミークラス症候群」です。2018年の北海道地震ではおよそ8人が発症、2016年の熊本地震では50人以上が発症・入院し、死者も出たことが報じられました。
では、なぜこれらの震災でエコノミークラス症候群の発症者が相次いだのでしょうか。
その主な理由とされるのが、「車中泊」「避難所生活中のトイレの我慢」です。
災害時のエコノミークラス症候群の原因:①車中泊
「被災者は避難所生活をする」というイメージが強いかと思いますが、避難所での集団生活は落ち着けないこと、何かあっても車ならすぐに逃げられることなどから、車中泊を選ぶ人も実は少なくありません。しかし特に熊本地震で多かったのが、「車中泊をした翌朝に倒れて亡くなる」という事例でした。
そもそもエコノミークラス症候群とは、長時間同じ姿勢で足を動かさなかったことで血流が悪化し、発生した血栓が足や肺の血管を詰まらせる病態です。つまり、車の中で座ったまま過ごしたり寝たりする車中泊は、「長時間足を動かさない」状況そのものであり、エコノミークラス症候群を起こす代表的なシチュエーションといえるのです。
災害時のエコノミークラス症候群の原因:②避難所生活中のトイレの我慢
では、避難所生活を送っていればエコノミークラス症候群の心配はないのかというと、そうともいいきれません。災害時はトイレが故障し、生活水も足りなくなるので、「トイレに行けないから水を飲まない」という状況に陥りがちです。また「共同の簡易トイレが不衛生だから使いたくない」と感じる方も少なくありません。
そのため、「トイレを長く我慢したい→水を飲まない→脱水状態→血液が濃くなり、血栓ができやすくなる」という、エコノミークラス症候群につながる状況を招きやすいのです。
災害時のエコノミークラス症候群、どんな対策が必要?
血栓が肺の血管に詰まると呼吸困難を招き、死に至ることもあるエコノミークラス症候群。災害時の発症を予防するには、どうすればいいのでしょうか。
①車中泊はしない
座席に4時間以上座ったまま動かずにいると、血栓ができる確率が2倍になるといわれています。そのため、車中泊はしないようにしてください。
やむをえない車中泊では、弾性ソックスの着用を
車中泊をせざるを得ないという場合は、弾性ソックスを着用しましょう。ふくらはぎに圧力をかけることで血流が改善し、血栓ができにくくなります。
なお、ひざ下までのハイソックスタイプのものを必ず使用してください。車中泊の場合、ひざ上までのタイプの使用はかえって危険とされています。
②こまめに足を動かす
避難生活中は閉じこもりがちですが、できる範囲で軽く歩いたりして、足を動かすようにしてください。もし歩くのが難しいときは、ふくらはぎを軽くもむ、足指のグーパー運動、つま先とかかとの上げ下ろし運動も有効です。
③こまめな水分補給
水分が不足すると血栓ができやすくなるので、こまめな水分補給も必要です。少なくとも1日0.8L以上の水分摂取を心がけましょう。また、お米やフルーツなどにも水分は含まれるので、水分の供給が足りないときはひとまず水分量の多い食べ物でしのぐようにしてください。
おわりに:「災害後の災害」こそしっかり対策を
震災や豪雨といった災害のニュースでは、土砂崩れや建物の倒壊によるケガ人や死者にフォーカスが当てられがちですが、その後もエコノミークラス症候群などの二次災害が起こるのが災害の恐ろしい点です。しかしきちんと対策をすれば、少なくともエコノミークラスによる死は防げるようになります。弾性ストッキングの用意などは災害が起こってからだと難しいので、災害が起こる前からできる準備を進めておきましょう。