子育て
うつ病の症状と対処法― 子どもの場合、高齢者の場合
2022年12月14日
子どもと思春期のうつ
子どもや思春期を迎えている若者が、うつ病になることもあります。その場合、どのような症状や対処法が考えられるのでしょう。
子どものうつ病の症状は、大人のうつ病と違う?
子どもや思春期にある若者のうつ病は、成人にみられるうつ病の症状とすべて同じというわけではありませんが、いくつかの共通点を持っています。
子どものうつ病では以下のような症状がみられることがあります。
- 食欲不振や体重減少
- 悲しい、または絶望感
- いつものように遊ぶのが楽しくない
- 心配しがちになる など
思春期の子どものうつ病では、以下のような症状がみられることがあります。
- 怒る(気持ちを制御できない)または不安を感じる
- 食欲に変化がある(通常よりも食べる、または食べなくなる)
- 学校やその他の社会活動に行きたくなくなる
- 自信がないようにみえる、または無力感を感じる など
これらの徴候が毎日、または数週間にわたっている場合、うつ状態にある可能性があります。
なぜ子どもはうつ病になるの?
遺伝、病状、および人生の大きな転機など、多くのことがうつ病を起こす要因になります。
子どもがうつ病を起こす要因には以下のものがあります。
- 家族が新しい場所に引っ越す
- 新しい学校に転校する
- ペット、友人、または家族のだれかが死ぬ
- 家族のだれかが重い病気になる
- 思春期のホルモン変化
- 注意欠陥・多動性障害(ADHD) など
子どもがうつ病かもと思ったら、どうすればいい?
子どもに自分の考えや気持ちを話すようにやさしく促してください。子どもの行動や、うつ病に対する懸念について、病院を受診して医師に相談することも良い考えです。医学的な問題がうつ病の原因となっている可能性がありますので、一般的な健康診断をする必要があるかもしれません。
子どものうつ病を治すためには?
うつ状態の子どもや思春期の若者の状態を改善するために必要なことは、カウンセラー、セラピスト、心理学者、または精神科医に、ありのままの気持ちを話すことです。家族カウンセリングでは、家族の皆さんを助けることができます。カウンセリングと併用して薬による治療が選択されることもあります。
高齢者のうつ
高齢者のうつにも特徴が見られます。
うつ病には加齢が関係するの?人生の変化が原因?
うつ病は加齢のせいで発症するものではありませんが、65歳以上の人が発症しやすいのも事実です。年をとると、退職、病気、家族の死によく直面するようになります。このようなときに悲しいと感じるのは普通のことです。しかし悲しみから抜け出せず、日常生活に支障が出る場合は医師に相談するのが安心です。
なぜ高齢者のうつ病は診断されにくいの?
高齢者では、うつ病と認知症などの病気の違いを診断するのが難しい場合があります。また、悲しい気持ちや不安な気持ちを医師や介護者に話すことを、高齢者が恥ずかしがってしまうことがあります。
しかし、うつ病は恥ずかしいことではありません。また、人間的に弱いからうつ病になるわけではありません。うつ病は発症したとしても、治療が可能な病気であることを理解しておきましょう。
高齢者のうつ病の症状は一般的なうつ病とどう違うの?
うつ病の患者に一般的にみられる精神的、身体的症状に加えて、高齢者のうつ病には、以下のような症状があります。
- 妄想や幻覚
- 退屈感や無力感
- 記憶上の問題または混乱が生じる
- 社会活動から一切離れる
高齢者を介護している場合、いつ主治医に相談すべき?
高齢者を介護している場合、うつ病のような症状や行動の変化が見られたら医師に伝えてください。うつ病の診断と治療は、認知低下、他の病気、自殺のリスクを軽減するのに役立ちます。
- 高齢者のうつ病の診断
-
- 家族に質問する
- ほかの病気の可能性を除外するためにいくつかの検査をする
- 親戚と話し合う
- その人がどんな薬を服用しているか確認する
高齢者のうつ病を助けるためにできることとは?
高齢者のうつ病の治療は、一般的な治療と同じであることが多いです。多くの高齢者は、ほかの病気を治療するために処方薬を服用しています。これらの薬のうちの1つがうつ病を引き起こしている場合、医師はおそらくその薬を切り替えることを提案するでしょう。
うつ病の高齢者を介護している場合、医師は家族、介護者に、対処方法についてアドバイスをし、サポートグループも紹介してくれる場合もあります。
悲しみ、喪失感
悲しみは、大切なだれかや何かを失ったときに感じる感情で、基本的には「喪失すること」に対する正常で健康的な反応です。人は、以下のようなさまざまな理由で悲しみを経験します。
- ペットや愛する人の死
- 離婚や人間関係の変化(友人関係を含む)
- 自分や愛する人の病気、健康状態の変化
- 職を失うなど、経済的な変化
- 退職、新しい場所への引越しなどの生活環境の変化
うつと似ている「悲しみにある段階」と、心理的身体的症状とは
著名な精神科医が、末期のがんと診断された人々がどのようにして悲しんだかを研究し、「悲しみ」を以下のようにわけて「5段階モデル(死の受容モデル)」としました。
1. 否定
「こんなこと起きていない。私のことではない」と否定する
2. 怒り
「なぜこんなことが起こったのか?だれが責任を負うのか?」と怒りを感じる
3. 交渉
「こんなことさえ起こらなければ、人生を変えられるのに」という考えが生じる
4. 落胆
「もうどうでもいい」と落ち込む
5. 受容
起きている出来事に穏やかな気持ちで向かい合っている
これらの気持ちはすべて正常です。しかし、悲しみを抱いている人だれもがこの感情のすべてを、同じ順序で経験するわけではありません。悲しみには、心理的症状と身体的症状の両方が含まれます。うつ病の症状とも似ています。
心理的な症状とは?
- 怒り
- 不安とパニック発作
- 非難
- 交渉
- 混乱
- 拒否
- 動揺
- 恐れ
- 罪悪感
- 過敏
- 孤独感
- 麻痺
- 悲しみ
- ショック
身体的症状とは?
- 泣きやまない
- 下痢
- めまい
- 速い脈拍
- 喉がつかえるような気分
- 幻覚(故人の姿が見えるなど)
- 頭痛
- 過呼吸
- 吐き気
- 空腹を感じない
- 不穏
- 息切れ
- 睡眠の問題
- 胸の圧迫感
- 疲れ
- 体重の減少または増加
悲しみに対処すべき正しい方法は?
誰にとっても正しい方法というものはありません。だれもが違う人間です。自分自身で「悲しみ」に向き合い、自分をケアすることを忘れないでください。たとえば、いまの気持ちを人に話しましょう。悲しみの記憶は、6~8週間もすれば薄れていくことも少なくありません。そして半年から4年も経てばさらになくなっていくでしょう。それでもまだ悲しみを感じる場合、助けを求めてください。友人、家族、医師、カウンセラー、セラピスト、支援団体などが助けになってくれます。
正常な悲しみとうつ病はどんな違いがあるの?
悲しみは、喪失の直後にやってきます。悲しみに関連する感情は一時的なものであるはずです。時間が経っても悲しみがなくならない、日常生活にもどれない、自分や他人を傷つけることを考え始めたら、うつ病の徴候かもしれません。
そうなったら一刻も早く医師に相談してください。うつ病の治療をはじめることで、気分は改善に向かうでしょう。
悲しみの向こうには、新しい自分がいる
前向きな気持ちを抱くようにすると、ちょっとしたことで気分がよくなることを感じられるでしょう。たとえば、午前中に起きるのが少し楽になる、エネルギーが少しずつ湧いてくるなどです。一連の浮き沈みはありますが、再びいろいろな活動を始められるでしょう。これは、新しい自分に移行している証拠です。
誕生日、記念日、休日、その他の特別なときにだけ、戻ってくる悲しみは、「想い出」としてあなたの人生の1ページに刻まれます。
おわりに:うつ病のサインを見逃さないために普段のチェックが必要
うつは、すぐに人には気づいてもらえない、気づかれない症状のこともあります。子どもや高齢者に限らず、成人男女、特に女性にも多く見られる病気です。知らないうちに心とからだが疲れきって、うつになることがないよう、普段のチェックに心がけてください。