子育て
水ぼうそうがうつる原因は?ウイルスの潜伏期間ってどのくらい?
2021年12月8日
水ぼうそうとは
水ぼうそうは水痘(すいとう)とも呼ばれ、「水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus=VZV)」によって引き起こされるウイルス性の感染症です。主に1~4歳くらいの小児が感染することが多く、ほとんどの人では9歳くらいまでに感染しますが、まれに小児期にかからず大人になってから感染する人もいます。
症状が出るのは初感染の時のみで、その後は体内に抗体(水痘帯状疱疹ウイルスだけを認識して攻撃する免疫のこと)ができるため、繰り返して感染することはほとんどありません。ただし、ウイルスそのものは感染後も体内に無症状のまま残り続けるので、年月が経過して抗体が少なくなるとともに、加齢によって免疫機能が衰えると「帯状疱疹」という疾患として現れることがあります。
水ぼうそうの潜伏期間と症状は?
水痘帯状疱疹ウイルスに感染すると、約2週間程度の潜伏期間の後、かゆみを伴う赤い発疹が出現するのが特徴です。小児ではこの発疹と同時に発熱が起こり、水ぼうそうの感染が発覚することが多いのですが、大人では発疹の前に軽い頭痛や全身倦怠感、にきびなど、すぐには水ぼうそうと気づきにくい症状が出ることが多く、発疹が出るまでわからないことが多いです。
発疹は胸や腹部を中心に、顔や手足にも広がっていき、人によっては頭皮や口の中にまでできることもあります。ポツポツとした2~3mmの赤い発疹はやがて水ぶくれになり、発症から6日程度でかさぶたに変わり、20日程度で大半が消失します。
免疫機能が正常な小児ではほとんどが重症化することなく、発熱などの辛い症状への対症療法と自然治癒で快癒します。しかし、ごくまれにかゆみで引っ掻いて破れた水ぶくれからの細菌の二次感染・髄膜脳炎・肺炎・肝炎などの合併症を引き起こすことがあり、かさぶたが終わってもなかなか発熱や食欲減退などの症状がおさまらない場合は注意が必要です。
さらに、成人が水ぼうそうを発症した場合、総じて小児よりも症状が重く、また合併症の頻度も高い傾向があります。特に、肺炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こすリスクが高く、妊娠している女性が感染すると合併症のリスクだけでなく、約1%の確率で胎児にも感染し、「先天性水痘感染症」という皮膚の痕や先天性異常、低体重出生などの後遺症が残る可能性があります。
水ぼうそうがうつる原因は?
水痘帯状疱疹ウイルスは非常に感染力の強いウイルスで、空気感染・接触感染・飛沫感染など、さまざまな経路で感染が広がります。その感染力は、感染者と同じ空間(室内・飛行機内など)に1秒でも入れば感染の可能性があると言われるほどで、マスクや空気清浄機でも防ぐことはできません。
水ぼうそうを発症している間、最も感染率が高いとされているのは発疹が水ぶくれになった段階で、かさぶたになるころにはほとんど感染力がないとされています。つまり、水ぶくれを引っ掻いて破いてしまうとそこからウイルスが放出されてしまうので、発症した小児を看病する場合などは特に注意しましょう。
水ぼうそうを予防するには?
水ぼうそうは、日本では小児を中心に年間約100万人が感染・発症する感染症でしたが、2014年10月から小児に対する水痘ワクチンの接種が任意接種から定期接種に繰り上げられたため、年々小児の発症は減ってきています。逆に、水ぼうそうに対する有効な予防方法はワクチンしか存在しないことがわかっています。
水痘ワクチンは、1歳の誕生日を迎えた後に1回目、最初の接種から3カ月後に2回目の合計2回接種するのがおすすめです。定期接種対象年齢は満1歳~2歳(1歳以上3歳未満)ですが、だいたい1歳3カ月までに1回目を接種することが多いようです。
定期接種対象年齢を過ぎてもワクチン接種していいの?
3歳を過ぎても接種できないわけではなく、むしろ幼稚園や保育園などで自然感染してしまった場合、ごくまれではありますが重症化するおそれもあります。逆に、ワクチン接種後なら万が一感染・発症したとしても軽症で済みます。ですから、定期接種対象年齢を過ぎてもワクチン接種を受けていない、感染・発症もしていない、という場合はやはり定期接種と同じようにワクチンを2回接種しておくのがおすすめです。
また、13歳以上の場合は3カ月間待たなくても、1回目の接種から28日以上の間隔をあければ2回目の接種ができます。特に、成人済みで過去に一度も水ぼうそうを発症したことがないという場合は、感染して重症化する前にワクチンを接種しておくのが良いでしょう。ただし、妊娠している女性や妊娠の可能性がある女性はワクチン接種ができません。また、接種後2カ月は妊娠を避けなくてはなりません。
子どもの頃発症していても、50歳以上になったらワクチンを打った方が良い?
子どもの頃に水ぼうそうを発症した、あるいは成人してから帯状疱疹を発症した、という方であっても、50歳ごろを過ぎてくると加齢によって免疫機能が衰え、水痘ウイルスに対する抗体が減ってきます。このため、水痘ウイルスが再び体内で勢力を取り戻し、帯状疱疹を発症する可能性があります。したがって、過去に水ぼうそうや帯状疱疹を発症したことがある50歳以上の方は、ワクチンを1回接種しておくとよいでしょう。
ワクチン接種の効果ってどのくらい?
ワクチンは、1回の接種で80~85%の予防効果があり、さらに重症化はほぼ100%防げると言われています。しかし、1回だけの接種では感染そのもののリスクを完全に防げているとは言えません。1回だけの接種では、約6~12%の人が数年以内に何らかの形で感染し、発症することがわかっています。そこで、2回の接種で99%以上の感染予防を行うことが推奨されているのです。
水痘ウイルスは感染力の強いウイルスですが、一度免疫がしっかりできれば発症しにくいため、一人ひとりがワクチン接種を行い自分自身の感染を防ぐことで、結果的に集団感染を防ぐことができます。集団感染を防ぐことは、免疫不全の方や何らかの原因で免疫機能が衰えている方、妊娠中の方など、水痘ワクチンを打ちたくても打てない状態の人を守ることにもつながります。
水ぼうそうのワクチンに副作用はある?
水痘ワクチンの副作用(副反応)は接種部位の軽い発赤などを除き、ほとんどありません。しかし、ごくまれに接種後2週間~1ヶ月後に発熱や発疹など、ごく軽い水ぼうそうの症状が現れることがあります。とはいえ、ほとんどの場合、傷跡が残ったりすることもなくきれいに治ります。
副作用とは異なりますが、やはりごくまれにアレルギー反応が出る可能性があります。しかし、この場合は接種後30分程度で反応が現れますので、発熱や手足の腫れ、蕁麻疹、顔色が悪い、ぐったりしているなどの明らかに体調不良の症状が出たら、すぐに接種した病院に連絡しましょう。
接種がまだなのに家族に感染者が!今からワクチンを打っても間に合う?
感染者・発症者と同じ空間にいたり、接触したりしてウイルスに感染しているかもしれない状態でワクチンを接種することを「曝露後接種」と言いますが、水痘ウイルスにはこの曝露後接種も非常に有効なことがわかっています。
感染者・発症者と接触後、72時間以内にワクチンを接種すると約90%という高い確率で発症を阻止することができます。家族内で発症した場合、どうしても同じ空間にいる時間や接触・飛沫を受けることが多いため、伝染率も重症化率も高いことがわかっています。ですから、水ぼうそうにかかったことがなくワクチンを打ったこともない人の家族が発症した場合、すぐにワクチンを接種しましょう。
おわりに:水ぼうそうは空気感染・接触感染・飛沫感染する
水ぼうそうのウイルスは非常に感染力が強く、空気感染や接触感染・飛沫感染といったあらゆる方法で感染する可能性があります。しかし反面、免疫抗体によってほぼ確実に発症を防ぐことができますので、2014年10月から始まった定期接種は必ず受けておきましょう。
また、定期接種対象年齢でなくても、一度も感染・発症やワクチン接種をしたことがない方も同様に2回接種し、しっかり感染を予防するのがおすすめです。