子育て
ピロリ菌に感染したら自覚症状はある?子どもが感染する可能性って?
2021年11月4日
ピロリ菌はどうすれば死滅する?
ピロリ菌は、胃がんの原因として検査や除去治療が近年すすめられるようになりました。正式名称を「ヘリコバクター・ピロリ」といい、長さが0.5マイクロメートル、直径が2.5~4.0マイクロメートルと細長い筒状の形をしている細菌です。
ピロリ菌にはべん毛とよばれる毛が数本あり、胃の中を移動することができます。ヘリコバクターやヘリコプターの「ヘリコ」は「螺旋(らせん)、旋回」という意味を持ちます。
ピロリ菌はべん毛の動きををもとにして、螺旋(らせん)状に前後に動くことができます。そのスピードは、人間でいうと100mを5.5秒で泳ぐくらいの速さです。
ピロリ菌は、酸素がある大気中では生きていくことができず、強酸性である胃液の中で生育できる菌です。胃液内の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解することで、酸を中和することができます。一度感染をすると、薬で除菌するまでは生き続けることができ、胃がんの原因になります。
ピロリ菌感染は年代が影響している?子供は感染するの?
ピロリ菌に感染している人と感染していない人がいる理由については、まだ明確にはわかっていません。これまでの調査・研究によって、ピロリ菌に感染している人は、幼少期の衛生環境が今ほどは整っていなかった年代の人に多くみられることがわかりました。
一方で、衛生環境が整ってから生まれた世代では感染そのものが減少しています。また、現在も発展途上国ではピロリ菌感染者が多く認められており、水道や下水といった衛生環境がピロリ菌の感染に関わっていると考えられています。
現代の日本では衛生環境が高い水準で整えられています。しかし、国内で全く感染する可能性がないわけではありません。ピロリ菌は、人から人へ経口感染ができると考えられています。特に、4歳以下くらいの子供では、ピロリ菌に感染している家族から感染する可能性があります。このため、親世代や祖父母世代がピロリ菌を除菌することが、感染予防の観点から大事になります。
ピロリ菌は保険内診療可能?治療開始のタイミングはいつ?
ピロリ菌に感染したからといって、ある程度経過するまでは目立った症状はほとんどありません。そのため、定期検診などで検査を受けて、初めて感染が判明するという人も少なくはありません。
ピロリ菌は、感染してから放置すると胃潰瘍や胃がんといった疾患を引き起こすことがわかっています。症状がないからといって放置せず、感染が判明した時点で除菌治療を開始することがすすめられます。2013年からは、保険内診療での治療が可能となり、身近なクリニックでも治療を受けやすいようになりました。まずは、かかりつけ医に相談してみるとよいでしょう。
ピロリ菌の有無を検査する方法の種類
ピロリ菌に感染しているかどうかは、ピロリ菌検査を受けることでわかります。現在行われている検査は、「尿素呼気試験、便中ヘリコバクター・ピロリ抗原検査、血中尿中ヘリコバクター・ピロリIgG抗体検査、内視鏡検査、病理組織学的検査、迅速ウレアーゼ試験、培養法」などの種類があります。
尿素呼気試験
ピロリ菌は、胃の中の尿素を分解して自分の体を守っています。この性質を利用して、尿素を含んだ薬を飲む前と飲んだ後の息の中に、二酸化炭素が増加するかどうかを測定します。ピロリ菌が分解した尿素かどうかわかるように、印をつけた検査薬(13C-尿素)を用います。
便中ヘリコバクター・ピロリ抗原検査
便内に排出されたピロリ菌を測定する検査です。
血中尿中ヘリコバクター・ピロリIgG抗体検査
ピロリ菌に感染していると、免疫反応として抗体がつくられます。血液中や尿中に含まれる抗体を測定します。
内視鏡検査
いわゆる胃カメラを行い、胃の粘膜の状態から判断をします。発赤、白い粘液が付着している、ひだが厚みを帯びているといった所見がないかを確認します。
病理組織学的検査
胃カメラを行った際に胃の粘膜を採取して、顕微鏡で異常がないか確認をします。
迅速ウレアーゼ試験
胃カメラで粘膜を一部採取して検査試薬に入れます。検査試薬には、尿素とpH指示薬が入っており、粘膜にピロリ菌が含まれていると尿素が分解されて、pHが変化し色が変わるという仕組みを使います。
培養法
胃カメラで粘膜を一部採取し、その中にいるピロリ菌を培養して、ピロリ菌の性質を詳しく調べる検査です。薬剤の効果や遺伝子診断などを行うために用いられます。
ピロリ菌はどうやって除菌治療するの?
ピロリ菌は、2種類の抗生物質と胃酸の分泌を抑える薬を一週間服用することによって除菌することができます。
一般的には、最初の除菌治療ではペニシリン系抗生物質のアモキシリン、マクロライド系抗生物質のクラリスロマイシン、プロトンポンプ阻害薬が用いられます。これらを服用して一週間の除菌治療をすれば、70~90%の方がピロリ菌の退治に成功できるとされています。
ただし、これらの除菌治療を行ってもピロリ菌退治に失敗することもあります。通常は治療終了後4週間後に再検査を行い、ピロリ菌感染が続いている場合は再度除菌治療を行うこととなります。二度目の除菌治療ではメトロニダゾールなど異なる種類の抗生物質が使用されます。
関連記事:ピロリ菌除菌で使う薬ってどんなもの?治療中の副作用は?
おわりに:ピロリ菌は子どもでも感染の可能性あり!検査後に菌が発見されたら早めに除菌を
ピロリ菌は、感染の初期では自覚症状があまりないものの、放置すれば慢性胃炎や胃潰瘍だけではなく、胃がんを引き起こします。症状がないうちに発見されれば、除菌の薬をしっかり服用することで除菌ができます。
現在は保険診療での除菌治療が受けられるようになり、地域のクリニックでも治療が可能となっています。健診で見つかったときにはかかりつけ医に相談をしてみましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。